海外小説の読書会で紹介された『審判』 / フランツ・カフカ(2023年3月11日)
不条理、新たな読書体験をしたいあなたにおすすめの1冊
「カフカ的」という言葉があるくらいその独特の不条理な作風で有名な20世紀を代表するチェコの小説家、フランツ・カフカの小説が読書会に登場しました。
カフカ・不条理と聞いてまず連想する作品が『変身』です。参加者全員が『変身』を読んだことがあり、しばらくその独特な世界観についての話になりました。
今回は『審判』です。
私はずいぶん昔に少し読んで挫折したような記憶が残っていました。内容は全く覚えていません。
主人公がK?
主人公はK。朝起きると突然逮捕されて訴えられます――。
冒頭から情報量の多い衝撃が襲います。それにKって、名前がKですか。ヨーゼフ・K。
Kといえば、夏目漱石先生の『こころ』に登場する先生の友人が”K”でした。ここから話が脱線して『こころ』の話題に……。「小説を書く人は全ての人が夏目漱石を読まなければならない」といった過激な発言もありながら『審判』の紹介が始まりました。
そういえば、同じカフカが書いた小説『城』の主人公もKだった、脳裏を過りました。
【あらすじ】
Kについてはごく平凡なサラリーマンとしか説明のしようがない。なぜ裁判に巻きこまれることになったのか、何の裁判かも彼には全く訳がわからない。そして次第に彼はどうしようもない窮地に追いこまれてゆく。全体をおおう得体の知れない不安。カフカ(1883‐1924)はこの作品によって現代人の孤独と不安と絶望の形而上学を提示したものと言えよう。
(引用元:「BOOK」データベース)より
「結局どういうこと?」
まずこの物語、なぜKが訴えられたのかわかりません。
「理由がわかりそうでわからない、読む意欲も低下してくるけれども、読み進めました」
紹介された方は、当時の裁判の様子が知りたくて頑張って読んだと言っていました。なぜKが訴えられたのか? 背景には絶対に何か大きな事件があったに違いない。そんなことを考えながら、ページをめくっていくうちに、物語の中に引き込まれたのでは?
「紹介を聞いてる分にはすごく面白そうですけど、どうでした? 読んでみたくなります」
「そんなことありません」
モテモテのK
もうひとつ不可解なことが、平凡で特筆すべきところがないヨーゼフ・Kが複数の女性と関係を持っている点でした。なぜこの男がモテるのか?
特別な魅力や個性を持っていないように見えます。平凡なルックスや性格、女性を引きつける魅力が感じられない……。
ヨーゼフ・Kは、黒い上着を見つけるために部屋中を探し回るシーンがあります。なんともだらしなさが際立つシーン。計画性があまりないように見え、焦りや不安から余裕のない男に映ります。
それでも彼はモテモテでした。気になる方はぜひとも読んでみてください。
未完の物語
この『審判』は未完の作品です。この他にも『城』『失踪者』とカフカの長編未完の3部作があります。
「『審判』って『城』ですか?」
『審判』の真相にたどり着かない話の流れがとても『城』に似ていたので、もしかしてタイトルの翻訳が違うだけで『城』なのかと思ったほどでした。
カフカの小説は読んでいる最中のもやもやが、読んだあともずっと余韻が続くようなテーマが内包されているのでしょう。
ということで、いつか三部作の未読である『審判』と『失踪者』も読みたいと思えるような紹介でした。