積読ジャーニー

本を積むということ

本を読まない人からすれば『積読』というのは、面白い概念のようです。
言われてみれば、たしかに興味深いです。

最近SNS上で「読書を始めました」という投稿を目にすることがあります。

”読書を始める”というのもけっこう不思議な面白味があります。
これまでに本を読んだことがないっていう人なんてほぼいないはずです

が、あえての「読書を始めました」。
それだけ”読書”という行動自体が特有の趣味になりつつあるのかもしれません。

そこから生まれた”積読”というまたへんてこな概念に向き合いたいと思います。

読みたい本はたくさんあって手元に置いているが、それを一向に読まない。

あるいは、読もうとする意志はあっても他の気になった本を購入して、どんどん積読本が増えていくばかり。

はたから見るともったいなく思いますが、そんな状態でも読書家の多くはそれほど焦ってもいないように見えます。むしろその状況を楽しんでいるのではないでしょうか。

これが食料であればいずれは腐ってしまいゴミ箱いきです。だから早く消化しなければ、という気持ちが働きますが、紙の本には賞味期限がありません。

積読という罪悪感の塊

こんな風に考えていた時期もありました。

「積読本を見るのがつらい」こんな声も聞こえてきます。

できるだけ早く必ず読まなければ、という心理的な負担から漏れる悲鳴なのかもしれません。
自分は読むのが遅い、という読書スピードからくる引け目もあるのでしょうか。

読解力が足りなくて読めなった。

あの人は自分が読めなかった本を読んでいる。

それも月に何十冊も読んでいる

というように卑屈になる人もいます。

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読みたい本をすぐに読めなくて本を途中で放り投げたり、読めなくなって積読が溜まってしまったケースが罪悪感というものに変化することも……。

本来、読書はひとりで読んで楽しむものであって、他人との比較は関係ありません。

読んだ後に色んな人と本について話すのが楽しいだけで、それは必ずしも必要なことではありません。
SNSの登場により、他人の読書が可視化された影響がそうさせるのでしょうか。

積読が増えに増え続けて、次はあれを読んでこれを読んでと計画するのは楽しいです。

その反面、増えすぎると”積読をしない方法”や”積読解消のルール”なんかも決めて、
制限したり、もはや仕事のタスク管理のように追い込まれていくことに問題があるのではないでしょうか。

でも安心してください。

制限すれば不満が積り、いずれは崩壊に向かっていきます。

「なぜ我慢しないといけないのか」

とバカバカしくなるのではないでしょうか。

窮屈にすればするほど、それから解き放たれたときのエネルギーは強く、読書欲が湧いてきます。

今では積読本が宝の山に見えるようになりました。読むべき本があるのは良いですね。
人によっては、積もれば積もるほど嬉しくなることもありますし。

でも、たまに長い期間積んでると、読んだ事があるような錯覚に陥る時があるので要注意です。

期待を買う。

最高の読書体験を得られるかもしれない、という未来の楽しみを積んでいます。

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積読ジャーニー

とはいえ、積読本を永久に放置して死蔵化させるわけにもいきません。

読んでいないのに本の内容を語ることはできます。


ネット上には多くのレビューが存在し、あらすじはもちろんのことネタバレ情報を知ることもあったりします。

が、「読む前の本」についてはあまり語られていません。

なぜあなたはその本を手にしたのですか?

  • 友人や会社の同僚からオススメされた
  • 雑誌で紹介されていた
  • SNSで流れてくる投稿を目にした
  • 偶然入った本屋で一目ぼれをした

その本を読もうと思ったきっかけは様々です。

多くの情報やタイミングの集積が、購入に至るジャーニー(思考の旅)となって積読されます。

この物語がとても魅力的に感じています。

というのも、読書会で紹介された本の「なぜこの本と出会ったのか」というエピソードが素敵なのです。


赤褐色のタートルネックと白いバッグを身に付けた女性の横顔。目を閉じて見上げている。

学生時代にある場所へ遠征したときに偶然見つけた古本屋さん、そこの女性店員に「こっちの本の方が面白いよ」と言って薦められた本

2023年1月8日の読書会にて

それが偶然の産物だった場合はよりドラマチックで、その本に対する愛着度は高まります。

積読本の中には、一生読まないかもしれないと怪しい目で見ている本が何冊かあります。
いつか何かのタイミングで手にとるかもしれませんが、今は眺めているだけも十分です。

本棚に積まれた本、かつて読みたいと思ったときの感情を呼び起こすには、その巡りあわせの物語を思い出すことでまた新鮮な気持ちで積読本を眺められると思います。

積読ジャーニー”は積読を解消するだけではなく、色褪せた読書欲を甦らせます。

(積読に至る素晴らしい物語)