SF・ミステリー・ホラー小説の読書会で紹介された『爆弾』 / 呉 勝浩 (2023年3月21日）
2023年3月21日の読書会で紹介された１冊目の小説はこちらです。
『爆弾』 著者：呉 勝浩 出版社：講談社
腹の探り合いや、心理戦のスリルを楽しみたいあなたにおすすめの１冊
ここ最近、ＳＮＳの読書アカウント界隈でよく見かけるこの小説。毎日触れていると、だんだん気になります。以前RENSの読書会でも紹介された夕木春央さんの『方舟』がＳＮＳを席巻していたのと似ていると感じていました。
ＳＮＳ上で頻繁に目にすることにより、断片的に小説『爆弾』についての情報や感想が目に止まり、やっぱり少し興味が湧いていました。
あまりにも話題に溢れ加熱しすぎると、かえって興味をなくすこともあるので、今回のタイミングで紹介されて個人的にとても嬉しかったです。
ということで、ネタバレを気にしつつも話題の小説『爆弾』の紹介が始まりました。
【あらすじ】
東京、炎上。正義は、守れるのか。
（引用元：版元ドットコム）より
些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。
たかが酔っ払いと見くびる警察だが、男は取調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。
直後、秋葉原の廃ビルが爆発。まさか、この男“本物”か。さらに男はあっけらかんと告げる。
「ここから三度、次は一時間後に爆発します」。
警察は爆発を止めることができるのか。
爆弾魔の悪意に戦慄する、ノンストップ・ミステリー。
紹介された方は言いました。
「爆発しすぎ」
これはいかにこの小説が勢いがあって面白い、という比喩だと思っていました。が、よくよく話を聞いてみるとそのままの意味のような気がしてきます。物理的に爆弾が爆発している――。
物語のストーリーラインも、まるで爆弾が爆発するかのような勢いが伝わりました。聞いているだけで、事件の真相や犯人の意図が何なのか、刑事たちの視点にたって情報を整理したくなります。
スピード感のある展開が爆発的に繰り出される過程、まるで時限爆弾をセットされたかのような緊迫感を演出されています。
途中で「何回爆発しますか？」という質問がありましたが、さすがにネタバレになるのでふせられました。
「スズキタゴサク」
「フザけたネーミング」紹介された方は呟きました。この人物こそが傷害事件で連行され、爆弾発言をする爆弾魔なのでしょうか。
若い世代からは古風な印象を受ける名前かもしれません。一方、年配の人にはどこか懐かしさを感じるのかもしれません。
令和の時代に”タゴサク”なんて聞くと、一般的にはどういうイメージを持つのでしょうか。その人物の年齢や振る舞いによって、奇妙で不気味にもイメージが変化しました。
場所は取調室。口からこぼれ落ちるその言葉は破滅的な爆発の予言……。
「暗い小説です」
紹介された方がこの小説を読もうと思った動機についてです。実は紹介された方は、身内から「この小説、買ってきて」と言われてせっかくなので読み始めたようです。
知り合いや友人、そして身内からの薦められて、本を手に取るきっかけとなることもあります。特に、買ってもらったり、自身でも前々から気になっていればなおのこと「ラッキー」です。
一応、身内の方の感想も聞いてみましたが、前述のとおり暗く重苦しそうでした。
読んでいない身としては”スズキタゴサク”のフザけた印象が強くて、そこでようやくこの小説のピントが合ったように思います。
「本屋大賞にもノミネートされているけど……」
この小説は2023年の『このミステリーがすごい! 』や『ミステリが読みたい!』をダブル受賞しており、第167回の直木賞候補作にもなっています。
さらに2023年の『本屋大賞』にもノミネートされています。
内容は暗くて過激で、子供とホームレスのどちらかに被害が及ぶようなシーンもあるらしいです。命を天秤にかけるインモラルな部分も……。
さて『本屋大賞』受賞となるのでしょうか。読んでみて、自身で判断するしかありません。
