海外小説読書会で紹介された 『シンプルな情熱』 / アニー・エルノー(2022年12月11日)
恋愛の沼に浸りたいときに読みたい一冊です。
昨年、ちょっとした時間に読めそうな小説を探していたときに手に取ったのがこの『シンプルな情熱』でした。ボリュームは100ページちょい、中編小説で文字もそれほど詰まっていばいので2時間ほどで読めました。
2022年ノーベル文学賞受賞
『シンプルな情熱』は読後もずっと心の奥底でくすぶっているような小説です。
読み終えてから半年以上経ったぐらいにこのニュースが飛び込んできました。
一方日本では、恒例のように村上春樹氏がノーベル文学賞の最有力候補者だという記事が話題にあがっていました。
結果は、フランスを代表する小説家のひとりであるアニー・エルノー氏が受賞されました。
このニュースがきっかけとなって、私の中でくすぶっていた『シンプルな情熱』が再燃して読書会で話をしようと望んだのです。
【あらすじ】
「昨年の九月以降わたしは、ある男性を待つこと―彼が電話をかけてくるのを、そして家へ訪ねてくるのを待つこと以外何ひとつしなくなった」離婚後独身でパリに暮らす女性教師が、妻子ある若い東欧の外交官と不倫の関係に。彼だけのことを思い、逢えばどこでも熱く抱擁する。その情熱はロマンチシズムからはほど遠い、激しく単純で肉体的なものだった。自分自身の体験を赤裸々に語り、大反響を呼んだ、衝撃の問題作。
(引用元:「BOOK」データベース)
2022年ノーベル文学賞受賞作家による衝撃作。
「これまでに泥沼の恋愛をしたいと思ったことはありますか?」
読書会において、初対面の方にこれほど不躾な質問はないかもしれませんが、『シンプルな情熱』を読むと聞いてみたくなります。
物語の冒頭は、
「昨年の九月以降わたしは、ある男性を待つこと―彼が電話をかけてくるのを、そして家へ訪ねてくるのを待つこと以外何ひとつしなくなった」
です。
この一文だけでもそうとうなインパクトがあり、語り手の女性がどういう状況に陥っているのかがわかります。
行動を制御されるというより、心がある男性以外には何も反応しないような感覚で胸がざわつきます。
読書会に参加されていた方は、どのように感じたのでしょうか。
表情からは読み取れないようでした。
「情熱?」
この小説の原題は『PASSION SIMPLE』です。
文章自体は、フンランス小説独特の詩的表現というよりは、かなりストレートな文体です。
訳者の加減もありますが、この小説の中で「Passion」が様々な翻訳をされています。
情熱 恋 恋情 執着といったニュアンスの異なるワード。読んでいてその場面にしっくりきます。
「Simple」についての解釈もあとがきには興味深く書かれています。
というのも「あとがき」は40ページほどあって読み応え抜群です。
“温度差”
『シンプルな情熱』を読むと、感情的に熱く内容を語りたくなります。
情熱的に語れば語るほど、聞き手との温度差を感じるケースは多々あると思います。
まさにその通りです。
この小説を語る場合は聞き手を置いてけぼりにせずに、ゆっくりと熱量を込めて話すことをおすすめします。
けっこう難しかったです。
ちなみに『シンプルな情熱』は で映画化もされています。
カンヌ国際映画祭の公式選出作品にもなっており、小説とは一味違った映像の魅力が気になります。
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