読書会の参加者が紹介する2022年ベスト本 / (2023年1月3日)
2023年1月3日の読書会
新年一回目の読書会ということで昨年読んだ中でベスト3に入るであろう本を紹介いただきました。が、皆さん1年間たくさん本を読まれていて「何を読んだっけ?」という流れが何度もありました。
その中から絞り出したように紹介してくださった本たちです。

嘘魚 / 新名 智
■ホラーも好き、ミステリーも好きという読者におすすめの欲張りな一冊
“体験した人が死ぬ怪談”を探す怪談師の三咲は、“呪いか祟りで死にたい”カナちゃんと暮らしている。――
ある日、「釣り上げた人が死んでしまう魚がいる」という噂を耳にした三咲は、その真偽を調べることにする。――
引用:版元ドットコム
第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞<大賞>受賞作。
■興味深い質問
「怪談エピソードってどうやって作られると思いますか?」
■参加者が盛り上がったところ
主人公が怪談師、「釣り上げた人が死んでしまう魚がいる」という噂――。この設定からしてすでに面白そうと盛り上がりました。だいたい怪談師なんて稲川淳二さんしか知らない!
■この本をより楽しめる情報
単行本の巻末には、著者から「第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞」受賞の言葉が掲載。
また作品の理解として、綾辻行人氏や有栖川有栖氏ほかの選評も興味深いです。
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アクロイド殺し / アガサ・クリスティー
■やわらかい頭で読みたいミステリー本
深夜の電話に駆けつけたシェパード医師が見たのは、村の名士アクロイド氏の変わり果てた姿。容疑者である氏の甥が行方をくらませ、事件は早くも迷宮入りの様相を呈し始めた。だが、村に越してきた変人が名探偵ポアロと判明し、局面は新たな展開を…驚愕の真相でミステリ界に大きな波紋を投じた名作が新訳で登場。
引用元:版元ドットコム
名探偵ポアロ ミステリーの女王クリスティーの名作
■興味深い質問
「クリスティーのミステリー小説を読んでいるときに、道徳とか倫理観とか考えたりしますか?」
■参加者が盛り上がったところ
限界ぎりぎりを攻めまくる”ミステリーの女王”の離れ業について(ネタバレになるので書けません)
■この本をより楽しめる情報
名探偵ポアロシリーズがお好きな人、ポアロが登場します。当時、賛否わかれる議論が沸き起こるほど影響力のある名作です。

ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル / テッド・チャン
■異次元の近未来を覗き見たいときに読む本
「あなたの人生の物語」を映画化した「メッセージ」で、世界的にブレイクしたテッド・チャン。待望の最新作品集がついに刊行。『千夜一夜物語』の枠組みを使い、科学的にあり得るタイムトラベルを描いた「商人と錬金術師の門」をはじめ、各賞受賞作9篇を収録。
引用元:版元ドットコム
世界最高水準のSF短編集
■興味深い質問
「これって、アレクサとかsiriみたいなものですか?」
「さらに育成ゲームを加えたペッパー君のようなものが仮想空間上にいて……それでいて……えー。」
■参加者が盛り上がったところ
人格を再現したAI(AI漱石やAI茂木健一郎氏のようなデジタルクローン)が、近い将来実際の生活に違和感なく溶けんでいくのではないでしょうか。ちょっと期待と不安の両方がありますね。
■この本をより楽しめる情報
ヒューゴー賞、ネビュラ賞をはじめ数々のSF小説の受賞作がおさめられた珠玉の短編集です。短編しか書いていない著者の真骨頂がここにあります。

香君 / 上橋 菜穂子
■生物や植物、自然を存分に感じたいときに読む本
遥か昔、神郷からもたらされたという奇跡の稲、オアレ稲。ウマール人はこの稲をもちいて帝国を作り上げた。――
引用元:版元ドットコム
時を同じくして、ひとりの少女が帝都にやってきた。人並外れた嗅覚をもつ少女アイシャは、やがて、オアレ稲に秘められた謎と向き合っていくことになる。
『精霊の守り人』『獣の奏者』『鹿の王』で有名な著者による新たなる大作
■興味深い質問
「もちろんアニメ化されるんですよね?」
という質問が出るぐらい話を聞いているだけでそこに広がる映像が自然と想像できました。
■参加者が盛り上がったところ
ディテールに神が宿っているんです! とにかく香り、植物や虫の描写が詳細でありながら関心を持たせられます。(紹介してくださった方も農業に詳しかったです)
■この本をより楽しめる情報
文藝春秋より香君の特設サイトもできるぐらい壮大な超大作です。
https://books.bunshun.jp/sp/kokun

夜叉ヶ池 / 泉 鏡花
■日本的な神秘の物語を読みたいときのおすすめ本
その昔竜神が封じこめられた夜叉ケ池。萩原はただ一人、その言伝えを守り日に三度の鐘撞きを続けるが…。幻想と現実が巧みに溶けあわされた――
引用元:「BOOK」データベース
■興味深い質問
「で、実際に夜叉ヶ池に行ったんですか?」
というのも、紹介者は昨年の夏に北陸旅行をされていました。
■参加者が盛り上がったところ
「やっぱり日本の幻想文学と言えば鏡花ですよね」
■この本をより楽しめる情報
この物語は戯曲として書かれていますので、舞台はもちろんのこと映画化もされています。

暗夜 / 残雪
■不条理ものや、フランツ・カフカ好きなあなたにおすすめの本
夢のような異世界を紡ぎだす、現代中国屈指の語り手による初訳を含むベスト作品集――
引用元:河出書房新社
現代中国の鬼才による短編
■興味深い質問
「結局、一言でいうと何の話なんですか?」
「じいさんと暗闇を歩き、猿山に行くお話?」
■参加者が盛り上がったところ
カフカの『城』の話題で盛り上がりました。
たどり着けそうでただり着けない、読んでいるうちに内省的になりますよね。
■この本をより楽しめる情報
中国のカフカと呼ばれているほどその系譜をついでおり、不条理文学を堪能できます。
一度ハマってしますとその世界観がクセになります。
【まとめ】
はじめにも書きましたが、昨年1年となれば何を読んだかすべて覚えていという方が多かったです。
「今回紹介した本より面白かった本があったはず」とおっしゃっていましたが、それでも印象に残っている本というのは、その人にとって何か特別なものだったのでしょう。