海外小説の読書会で紹介された 『方舟』 / 夕木 春央(2022年12月4日)
刻一刻と迫りくるスリルを肌で感じたいときに読みたい一冊です。
この小説は、今年(2022年)の夏以降SNSの読書アカウント界隈ではほぼ毎日見かけるほどの盛り上がりを見せていた衝撃作です。
今でこそ書店に行くと平積みされていますが、書店で大きく取り上げられていないときからSNS上の話題をさらっていました。
紹介したのは主催者である私でした。
久しく国内のミステリー小説を読んでいません。
が、”連日Twitterのタイムラインに流れてくる『方舟』ツイートに感化されて”
読んでみたいという欲求が日に日に膨らみついに手に取りました。
実はというと、このミステリー小説の読書会を開催する目的のひとつがこの『方舟』だったのです。
これだけ話題の本なので参加者の方が読んでいる可能性が高いと睨んでいました。
残念ながら参加者に読まれた方はいませんでしたが、その存在は当然のように認知されていました。
ということで、私は『方舟』について恐る恐るネタバレの地雷を踏まないように話し始めることになったのです。
【あらすじ】
9人のうち、死んでもいいのは、ーー死ぬべきなのは誰か?
大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。
翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。
そんな矢先に殺人が起こった。
だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。生贄には、その犯人がなるべきだ。ーー犯人以外の全員が、そう思った。タイムリミットまでおよそ1週間。それまでに、僕らは殺人犯を見つけなければならない。
(引用元:版元ドットコム)
帯に寄せられた幾つもの絶賛の声。
「面白かったですか?」
というかなりシンプルな質問が鋭く切り込んできました。
「はい」即答したように覚えていますが、もう少し説明を加えたかったというのが本心でした。
あらすじは公開されているよりもっと簡単に話をしました。
設定を詳細に伝えるだけで、ネタバレにならないかという点に配慮をしたからです。
読み始めてすぐに感じたのは、『方舟』の設定は驚くほどわかりやすく、すぐにその状況を飲み込むことができました。
“トロッコ問題”
『方舟』の帯にも書かれていたこのワード(問題)については、皆さん反応をしました。
「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?」
犠牲者の選択、それは道徳や倫理観、罪悪感にまで訴えかけられます。
この小説は冒頭から数ページですぐに夢中になるような強い吸引力があります。それは、タイムリミットがせまる登場人物たちと一体となって感じる焦り、のようなものからくるのかもしれません。
ほとんどの優れたミステリー小説がそうであるように、仮にネタバレOKだったとしても、ネタバレをしようとは思いません。
実際に読んでもらって、その衝撃を直接味わってほしい、そんな小説です。
ちなみにこの『方舟』は、週刊文春ミステリーベスト10」や「MRC大賞2022」を受賞しています。
他にもいくつかのミステリー小説ランキングにも顔を出す実績のある本です。
(このミスやミステリが読みたい! 本格ミステリ・ベスト10……etc)
興味があれば是非おたのしみください。
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