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読書会で紹介されました“おすすめ読書“本について、その魅力をお伝えします。

今回の海外小説限定読書会(2022年12月11日)で紹介されました本はこちらです。
『息吹』 著:テッド・チャン

高水準のSF小説で、異次元の近未来を覗き見たいときに読みたい一冊です。

まず表紙がとてもスタイリッシュです。
白を基調とした背景にフォントサイズの異なる黒文字が、ズレた切り絵のように配置さています。
中央には大きく「息吹」という文字が存在感を誇示しています。

カッコいい。

帯にはアメリカ合衆国の前大統領であるバラク・オバマ氏のコメントも寄せられています。
それだけで、この作品集が傑出したものであるという期待が膨らみます。

参加者全員がこの小説を当然のように知っていました。さらに前作の『あなたの人生の物語』を読了済でした。
著者であるテッド・チャンについての情報も頭に入っています。

この本を紹介された方は普段、海外の小説はそれほど読まず国内のミステリー小説を中心に読んでおられました。
知人に薦められてテッド・チャンを読み、面白かったので『息吹』そして『あなたの人生の物語』も読み始めたらしいです。

【あらすじ】

「あなたの人生の物語」を映画化した「メッセージ」で、世界的にブレイクしたテッド・チャン。第一短篇集『あなたの人生の物語』から17年ぶりの刊行となる最新作品集。人間がひとりも出てこない世界、その世界の秘密を探求する科学者の、驚異の物語を描く表題作「息吹」(ヒューゴー賞、ローカス賞、英国SF協会賞、SFマガジン読者賞受賞)、『千夜一夜物語』の枠組みを使い、科学的にあり得るタイムトラベルを描いた「商人と錬金術師の門」(ヒューゴー賞、ネビュラ賞、星雲賞受賞)、「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」(ヒューゴー賞、ローカス賞、星雲賞受賞)をはじめ、タイムトラベル、AIの未来、量子論、自由意志、創造説など、科学・思想・文学の最新の知見を取り入れた珠玉の9篇を収録。

(引用元:版元ドットコム)

この本はヒューゴー賞、ネビュラ賞をはじめ数々のSF小説の受賞作がおさめられた珠玉の短編集です。短編しか書いていない著者の真骨頂がここにあります。

UFO

「理解できましたか?」

『息吹』は短編集ですが、どれも設定が凝っていて濃い話ばかりです。
軽い気持ちでぱらぱらとページをめくるような本ではないことを全員が感じていました。

50ページにも満たない話でも文章を追いながら、頭で確実にその設定を理解して、具体的な映像に映す作業をします。これはなかなか良い頭の体操になります。

テッド・チャンの小説が面白かったと言えるだけで、私たち参加者は称賛をおくりました。
実際、私もちんぷんかんぷんな内容があったからです。

「人間がひとりも登場しない小説でも面白いですか?」

この短編集のあらすじにもあるようにタイムトラベル、AIの未来、量子論といった興味深い設定がたくさんあり、飽きさせないラインナップになっています。

なかでも面白かったのは表題作でもある『息吹』を推していました。
人間が登場しない小説は多くありません。
それをテッド・チャンがどのように料理をしたのか?

“小説は人間を描くもの”という声が聞こえてきそうです。

テッド・チャンは未来の設定を通して人間が登場しなくてもその奥には人間の影、匂い、断片をうまく潜ませまているような気がします。

そうすることによって人間が登場せずとも物語にスッと入っていけました。

「テッド・チャンの文章ってどうですか?」

話題は、テッド・チャンの文章表現になりました。
テッド・チャン自身が専業の小説家ではなく、物理学やコンピュータのテクニカル・ライターです。

SF作家の中でも、少し独特な文章だという印象を全員が抱いていました。
が、どこが独特なのかという具体的な違和感を明確にはできませんでした。

翻訳本ということもありますが、テッド・チャンの小説はテッド・チャンの文体によってさらにその世界観を深めているのではないでしょうか。

と、簡単に語るには手に負えないテッド・チャンの小説、これからも注目していきたいです。

その他に紹介された本はこちら

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