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読書会 2023年11月25日

11月の最終週に開催された読書会です。2023年も残りわずか1ヶ月となりました。
この読書会は、ジャンルが自由ということで作風の異なる小説が紹介されました。

内容には一部ネタバレを含みます。


君のクイズ / 小川 哲 (朝日新聞出版)

クイズとミステリ、思考実験が好きなあなたにおすすめの1冊

――生放送のTV番組『Q-1グランプリ』決勝戦に出場したクイズプレーヤーの三島玲央は、対戦相手・本庄絆が、まだ一文字も問題が読まれぬうちに回答し正解し、優勝を果たすという不可解な事態をいぶかしむ。いったい彼はなぜ、正答できたのか? 真相を解明しようと彼について調べ、決勝戦を1問ずつ振り返る三島はやがて、自らの記憶も掘り起こしていくことになり――。

引用元:「版元ドットコム」より

■興味深い質問

”ゼロ文字正答”ってなんですか?」

あらすじにも書かれている通り、問題文が一文字も読まれないうちに正答することです。このクイズ形式では、回答者は問題の提示を待たずに、瞬時に答えを導き出さなければなりません。つまり、回答者は問題の全文どころか一文字を聞く前に限られた情報や、あるいは自身の洞察力や知識を駆使して答えを見つける必要があります。
「その設定だけで面白いですね」

■参加者の関心

「早押しクイズは競技かるたのような早業」

漫画『ちはやふる』でそんなシーンがあったような気がします。それは読み手の息づかいや口の動き、さらには空気の震えなどの微細な手がかりを頼りにして瞬時に判断する……。さて真相はどうなのでしょうか。

■この本をより楽しめる情報

2023年の本屋大賞にノミネートされるなど、高く評価されています。帯には、伊坂幸太郎氏や、日本のテレビプロデューサーである佐久間宣行氏の絶賛のコメントが掲載されています。また本作は著者のバイオレンス色はないので、それもまた万人が手に取りやすくもなっています。


歌われなかった海賊へ / 逢坂 冬馬 (早川書房)

戦争背景にした若者の葛藤、人間ドラマを読みたいあなたにおすすめの1冊

1944年、ナチ体制下のドイツ。父を処刑されて居場所をなくした少年ヴェルナーは、体制に抵抗しヒトラー・ユーゲントに戦いを挑むエーデルヴァイス海賊団の少年少女に出会う。やがて市内に敷設された線路の先で「究極の悪」を目撃した、彼らのとった行動とは?──

 引用:「版元ドットコム」より

興味深い質問

「前作の”同志少女よ、敵を撃て”とどちらが面白かったですか?」

前作が第二次世界大戦中の独ソ戦争を舞台にしたロシアを描いていたのに対し、本作は戦争終結間際のドイツを舞台にしています。この地理的および時代的な対比は、非常に興味深いです。
「どちらの作品がより響くかは好みによりますが、個人的には、前作ほうがより肌に合っていたと感じます。」

■参加者が盛り上がったところ

「ケイティ・スカーレット・オハラ」

第二次世界大戦だけでなく、戦争をテーマや時代背景にした小説はたくさんあります。が、それこそ戦争小説自体がそれほど人気のあるジャンルではありません。
「何か読んだことはありますか?」
「あの小説は読んだ!」
「あれあれ、スカーレット・オハラが登場するやつ」
しばらく誰も思い出せませんでした。
その後、調べました「あー『風と共に去りぬ』だ」

■この本をより楽しめる情報

2022年の本屋大賞受賞作『同志少女よ、敵を撃て』の著者による待望の第二作が、ついに登場しました。今回の作品は青春小説です。戦争の渦中、少年少女の葛藤や心境が前作とは違った視点で描かれています。


ボヌール・デ・ダム百貨店 / エミール ゾラ (論創社)

■19世紀のフランス消費社会を読み解きたいあなたにおすすめの1冊

消費社会の起源を刻明に描いた百貨店の物語。ボヌール・デ・ダム百貨店、120年ぶりに新装オープン。ゾラが見た消費の神殿。くりひろげられる魅惑・労働・恋愛、本邦初訳・完訳版。

引用元:「BOOK」データベースより

興味深い質問

”檸檬”ってそんな話?

『檸檬』は、梶井基次郎氏の名作として広く知られていますが、その詳細な内容を覚えている方は少ないかもしれません。この短編小説は、意外にも百貨店(丸善)のシーンが登場します。エミール・ゾラの『ボヌール・デ・ダム百貨店』と『檸檬』、両作品は百貨店という共通の舞台を持っています。こんな話題になると思いませんでした。

■参加者が盛り上がったところ

「商店街vs大型ショッピングモール」

19世紀後半のフランスを舞台にした本作では、当時の消費社会が鮮明に描かれています。特に、現代にも通じる「デパート対個人商店」というビジネスの構図が、既にその時代の作品に描かれていることは非常に興味深い点でした。

■この本をより楽しめる情報

「消費社会を描いた”ルーゴンマッカール叢書”」

以前RENSの読書会でも紹介された、炭坑での労働者の過酷な生活を描いた『ジェルミナール』に続く、『ルーゴン・マッカール叢書』。バルザックの『人間喜劇』に匹敵する壮大な作品群です。このシリーズは、19世紀のフランス社会を多角的に描き出しています。


三十の反撃 / ソン・ウォンピョン (祥伝社)

■韓国の文化や現代の労働問題に関心のあるあなたにおすすめの1冊

1988年ソウルオリンピックの年に生まれ、三十歳になった非正規社員のキム・ジヘ。88年生まれに一番多い名前「ジヘ」と名付けられた彼女はその名の通り、平凡を絵に描いたような大人になっていく。
大企業の正社員を目指すジヘの前に現れたのは、同じ年の同僚ギュオク。彼の提案する社会への小さな反撃を始めることになったジヘは、自身を見つめなおし、本当にしたかったことを考えるように。そして、ついに「本当の自分」としての一歩を踏み出すことになる――。

引用元:「版元ドットコム」より

興味深い質問

「韓国で多い名前には形容詞がつくんですか?」

韓国において、姓が「金(キム)」や「李(イ)」である人は非常に多く、これらの姓は韓国で最も一般的なものです。そのため、同姓の人々を区別するために、日常会話の中で頭に形容詞を付ける習慣があります。例えば、美しいキムさん、青いキムさん……。

■参加者が盛り上がったところ

「飴を食べる飴ちゃんいる? は禁句」

”飴ちゃん”といえば、大阪のおばちゃんたちがよく持ち歩いて、気軽に他人に渡すあれです。これは親切の表現や親しみやすさの象徴です。が、一方の韓国においては「飴を食べろや、飴ちゃんあげる」という言葉には攻撃的で危険な意味合いが含まれています。
知らなければ、恐ろしい事態になります。

■この本をより楽しめる情報

2022年の本屋大賞翻訳小説部門で第1位に輝いたこの作品は、韓国の文化を背景にしています。特に非正規雇用という、日本だけでなく多くの国で共通の社会問題に深く切り込んでいます。


【まとめ】

今回の読書会では、多様なジャンルの本が紹介されました。
生放送クイズ番組の舞台裏、1944年ドイツの青春物語、19世紀フランスの消費社会、そして韓国の非正規雇用問題を扱う作品が話題となりました。文化や歴史に触れるいい機会でした。

また、課題本読書会も募集しておりますので、リクエストがあればご連絡ください。

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