2022年ベスト本読書会で紹介された『開かせていただき光栄です』 / 皆川 博子(2023年1月28日)
色とりどりのキャラクターたちが登場する物語を読みたいあなたへオススメの1冊。
今回の読書会で初っぱなに紹介されたのがこの小説でした。
皆川博子さんの小説は、本屋にいけば数え上げればきりがないほど目にとまります。何百という作品が世に出て、しかもそれぞれが高いクオリティを保っています。
読書好きの人であれば、読んでいなくとも絶対に触れる機会があったと思います。
書かれているジャンルもさまざまで、本格ミステリ、時代小説、幻想小説、そして文化功労者にも選出されているほど超有名な作家さんのひとりです。
「この小説は一度図書館で読んでから購入しました」
そんな著者の小説が「2022年ベスト本読書会」に登場しました。
面白いに決まっています。紹介された方は、この小説を本屋で購入する事前に図書館で読破していたのです。
「面白い小説って手元に置いておきたいじゃないですか」
他の参加者も私もこれには強く共感しました。
「置き場所には困りますけど、そんなことは気にせず買っちゃいますね」
「おかげで、本棚はパンパンですよ」
【あらすじ】
18世紀ロンドン。外科医ダニエルの解剖教室からあるはずのない屍体が発見された。四肢を切断された少年と顔を潰された男。戸惑うダニエルと弟子たちに治安判事は捜査協力を要請する。だが背後には詩人志望の少年の辿った恐るべき運命が…解剖学が最先端であり偏見にも晒された時代。そんな時代の落とし子たちが可笑しくも哀しい不可能犯罪に挑む、本格ミステリ大賞受賞作。
(引用元:版元ドットコム)より
「じつは私も昔読んだことがありました。でも途中で挫折しました」
『開かせていただき光栄です』は2011年に出版されています。
他の参加者も出版当時かその少しあとぐらいに同じく読まれたそうです。
「ずいぶん前のことなので、どの場面で読むことをやめたのか、なぜ途中で本を閉じたのか? 覚えていません」
そして数年の時を経て、「2022年ベスト本読書会」でこの本に出会う、偶然の邂逅にはどこか運命的なものを感じたのは私だけだったのでしょうか。ひとり興奮していました。
この読書会がキッカケでまた読まれることがあればいいなと思います。
「シリアスでありながらコミカルな描写が読む推進力となって」
のちに今回の読書会で焦点になった話題のひとつが「登場人物の背景」です。
『開かせていただき光栄です』には外科医と5人の弟子に加えて多くのキャラクターが登場します。
一人ひとりの個性が豊かで、読んでいても識別しやすいようです。
「解剖シーンって重たくなりませんか?」
解剖の描写は淡々としていながら、一定のリアリティを保っているのは著者の技量の高さをあらわしています。
深刻なシーンとコミカルな描写のバランスが絶妙で、どんどん読み進めていける、そんな小説です。
小説のタイトルは
タイトルの『開かせていただき光栄です DILATED TO MEET YOU』については、登場人物がその意味を解説しているようです。
由来は「お目にかかれて光栄です」( delighted to meet you)の言い回しを、遺体の解剖をイメージさせるように変換して『開かせていただき光栄です』としています。