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読書会 2024年2月11日

「2024年本屋大賞」のノミネート作品が発表されたことを受けて、歴代の本屋大賞受賞作品や過去にノミネートされた作品についての感想を共有する読書会を開催しました。
今回のノミネート作品には、どのようなジャンルやテーマの作品があるのでしょうか。
内容には一部ネタバレを含みます。


戦場のコックたち / 深緑野分 (創元推理文庫)

戦場での日常を知りたいあなたにオススメの一冊

合衆国陸軍の特技兵(コツク)、19歳のティムはノルマンディー降下作戦で初陣を果たす。軍隊では軽んじられがちなコックの仕事は、戦闘に参加しながら炊事をこなすというハードなものだった。個性豊かな仲間たちと支え合いながら、ティムは戦地で見つけたささやかな謎を解き明かすことを心の慰めとするがーー

引用元:「東京創元社」より

■興味深い質問

「重たい話ですか?」

「戦争の部分は確かに心に重くのしかかるものがあります。だから一気に読みました。ただ戦争の暗さだけではなく、人々の日常生活や小さな喜び、さらには解き明かされるべきミステリーも織り交ぜられていて、それがとても魅力的でした」

盛り上がったところ

「マクドナルドで集まる

戦争を生き抜いた兵士たちが、平和の時代を迎えたベルリンのマクドナルドで再会します。
「もう若くない4人の元兵士たちがマクドナルドでの再会という設定が、本当にユニークです。日本では、長い間会っていなかった友人や仲間が再会する場合、どちらかといえば料亭のような落ち着いた場所を選ぶことが多いかもしれませんが、この小説ではファーストフード店です」

■この本をより楽しめる情報

2016年の本屋大賞にノミネートされました。それだけでなく、第18回大藪春彦賞と第154回直木賞にも候補に上がっています。また当店RENSの読書会でこの著者の別の作品「ベルリンは晴れているか」も紹介されました。ちなみにこちらもの作品も本屋大賞の候補でした。


破船 / 吉村 昭 (新潮文庫)

暗い歴史と疫病というテーマに関心があるあなたにオススメの1冊

二冬続きの船の訪れに、村じゅうが沸いた。しかし、積荷はほとんどなく、中の者たちはすべて死に絶えていた。骸が着けていた揃いの赤い服を分配後まもなく、村を恐ろしい出来事が襲う……。嵐の夜、浜で火を焚き、近づく船を坐礁させ、その積荷を奪い取る――僻地の貧しい漁村に伝わる、サバイバルのための異様な風習“お船様”が招いた、悪夢のような災厄を描く――

 引用:「新潮」より

興味深い質問

「実際に起こった事件を元にしているんですか?」

前提としてフィクションです。作品の背景には、江戸時代初期の日本海沿岸の村がモデルになっている可能性がありますが、内容の強烈さから具体的な村の名前は明かされていなかったと思います。

■参加者が盛り上がったところ

「黒歴史や天然痘」

村人たちは座礁した難破船を「お船様」と呼び、ある種の畏敬の念を込めていたようです。日本史にとっての暗い過去を物語っており、かつてはこのような出来事が各地で起こっていたのではないかと、話題になりました。閉鎖された空間で行われるカルト的な儀式のように感じられ、ゾッとさせられました。

■この本をより楽しめる情報

2022年に話題の本屋大賞「超発掘本!」に選ばれました。孤立した村が遭遇した疫病は、現代の新型コロナウイルスとの戦いと重なる部分があります。また日本ではまだ映像化されていませんが、2020年にフランスで映画化され、国際映画祭で評価されました。


黄色い家 / 川上 未映子 (中央公論新社)

■1990年代、社会の裏側に興味があるあなたにオススメの一冊

2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶――黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな〝シノギ〞に手を出すことになる。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい……。

引用元:「中央公論社」より

興味深い質問

「以前のイメージと違う?」

著者が以前芥川賞を受賞した『乳と卵』とは全く異なる作品です。『乳と卵』では関西弁の使用が特徴的であり、そのイメージが強かったものの、今回の新作ではそのような要素は一切なく、非常に読みやすい文体で書かれています。文体にはくどさがなく、物語が鮮明に浮かび上がるような文章で構成されています。

■参加者が盛り上がったところ

「1990年代の雰囲気」

この作品は、1990年代特有の文化や雰囲気を色濃く反映しています。偽造されたクレジットカードや、X JAPANの名曲「紅」に代表される音楽、援助交際やギャル文化、そしてポケベルといった時代を象徴するアイテムが登場するなど、多様な要素が盛り込まれていて、1990年代を知る人々には特に懐かしい感覚を呼び覚まされました。

■この本をより楽しめる情報

第75回読売文学賞(小説賞)を受賞、そして「2024年 本屋大賞」にもノミネートされています。本作は、1990年代の社会の一側面とその裏側を繊細かつリアルに描写しており、そのディテールと独特の雰囲気が当時を思い出させます。また社会の表面だけではなく、隠された側面に光を当てています。


月の立つ林で / 青山美智子 (ポプラ社)

■ラジオのファン、人生の満ち欠けを感じたいあなたにオススメの一冊

長年勤めた病院を辞めた元看護師、売れないながらも夢を諦めきれない芸人、娘や妻との関係の変化に寂しさを抱える二輪自動車整備士、親から離れて早く自立したいと願う女子高生、仕事が順調になるにつれ家族とのバランスに悩むアクセサリー作家。

つまずいてばかりの日常の中、それぞれが耳にしたのはタケトリ・オキナという男性のポッドキャスト『ツキない話』だった。
月に関する語りに心を寄せながら、彼ら自身も彼らの思いも満ち欠けを繰り返し、新しくてかけがえのない毎日を紡いでいく――。

引用元:「ポプラ社」HPより

興味深い質問

「『赤と青とエスキース』と似ていますか?

本作も連作短編集ですが、『赤と青とエスキース』と比較して、各話の繋がりがより強い連作感を持っているようです。
ちなみに本作を紹介された方は、以前RENSの読書会で『赤と青とエスキース』を紹介してくれました。

■参加者が盛り上がったところ

「オールナイトニッポン」

深夜にラジオを聴くときの雰囲気は特別で、時間が違うように流れる感覚がありますよね。そんな中で、『オールナイトニッポン』が特に好きだったという話で盛り上がりました。深夜の特有の空気感と、リスナーとのつながりを感じさせる内容で多くの人に愛されています。

■この本をより楽しめる情報

『お探し物は図書室まで』と『赤と青とエスキース』で2年連続で本屋大賞の第2位に輝いた後、この本作も「2023年本屋大賞」にノミネートされました。もはや本屋大賞の常連と言えるほどです。


【まとめ】


今回の本屋大賞ノミネート読書会では、注目の新作から、「超発掘本」、さらには本屋大賞に何度も名を連ねる常連作家の作品まで、多種多様な小説が紹介されました。
継続して課題本読書会も募集しておりますので、リクエストがあればご連絡ください。

【課題本一覧】
百年の孤独 / G・ガルシア=マルケス ←6月8日開催予定
重力の虹 / トマス・ピンチョン ←9月開催予定
鳳仙花 / 中上健次 ←未定(参加希望者が2名以上になれば)
幻滅 / バルザック        〃
金閣寺 / 三島由紀夫        〃
海と毒薬 / 遠藤周作        〃

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