BLOG

アーカイブ

読書会 2023年11月4日

11月に入り、季節は徐々に冬に近づき、肌寒くなってきています。さて今回開催された読書会は、「ジャンルフリー」でした。自由な選択の余地があることで、参加者はそれぞれの好みや興味に基づいて本を選び、読書会をより豊かにしてくれました。

紹介された小説はこちらです。(感想はあくまで個人のものです)


神の棘 / 須賀 しのぶ (新潮文庫)

■ナチス政権下ドイツを舞台にした物語を読みたいあなたにおすすめの1冊

家族を悲劇的に失い、神に身を捧げる修道士となった、マティアス。怜悧な頭脳を活かすため、親衛隊に入隊したアルベルト。寄宿舎で同じ時を過ごした旧友が再会したその日、二つの真の運命が目を覚ます。独裁者が招いた戦乱。ユダヤ人に襲いかかる魔手。信仰、懐疑、友愛、裏切り。ナチス政権下ドイツを舞台に、様々な男女によって織りなされる、歴史オデッセイ。――

引用元:「BOOK」データベースより

■興味深い質問

「一応、ミステリー小説なんですか?」

この物語は1930年代のドイツを舞台に、修道士を目指すマティアスと親衛隊に入隊したアルベルトの特殊な状況下の葛藤が描かれています。二人は異なる道を歩みながらも、政治的抑圧の中で自分の立場と信念に苦悩します。彼らの選択は複雑な展開を生み、秘密や裏切り、予期せぬ出来事そしてミステリー展開もあるそうです。

■参加者の関心

「アインザッツグルッペン

この作品における主要人物アルベルトは、ある特定の理由から非情で冷酷な部隊であるアインザッツグルッペンに入隊します。その中でアルベルトは「殺しても意味がない、考えることも意味もない」というニュアンスの言葉を残します。これは絶望と無力感なのでしょうか、とてもセンシティブな内容であり形容が難しいです。

彼が直面している極限状態の中での内面の葛藤を示し、暴力と人間の存在の意味について深く考えさせられます。アルベルトのこの言葉は、彼の個人的な経験を超え、より大きな歴史的、倫理的な問題を提示しています。

■この本をより楽しめる情報

この小説はハヤカワ・ミステリワールドから出版された後、新潮文庫でも出版されています。ということでやはりミステリーの要素が含まれていますが、それ以上に注目すべきは、ナチス政権下の圧倒的な極限状態で生きる二人の対照的なキャラクターの物語です。

小説はミステリーの枠を超えて、極限下での人間の複雑な心理と歴史的な出来事との関連を巧みに描き出しています。


クライマーズ・ハイ / 横山 秀夫(文春文庫)

■新聞メディアの内情に触れたいあなたにおすすめの1冊

1985年、御巣鷹山に未曾有の航空機事故発生。衝立岩登攀を予定していた地元紙の遊軍記者、悠木和雅が全権デスクに任命される。一方、共に登る予定だった同僚は病院に搬送されていた。組織の相剋、親子の葛藤、同僚の謎めいた言葉、報道とは―。あらゆる場面で己を試され篩に掛けられる、著者渾身の傑作長編。

 引用:「BOOK」データベースより

興味深い質問

「日航機墜落事件がメインの話ですか?」

それだけではありません。この物語は、日航機墜落事件を核とし、それをめぐるメディア内の対立やジャーナリストの葛藤、乗客家族の苦悩を描きます。ジャーナリストたちは報道倫理と編集方針の間で、真実を伝えるために奮闘します。深い人間ドラマを通じて、新聞社の実情・矛盾と変革の必要性を示し、読者に強い印象を与えます。

■参加者が盛り上がったところ

「当時の新聞社の内情と現代のネット記事」

時代の変遷とともにメディアも変わります。過去の新聞社の倫理的葛藤や報道の限界、情報選別と配信方法が対照的に、現代ではインターネットによる情報の即時拡散と真実と誤情報の混在しています。

ジャーナリズムの倫理観、情報伝達の役割と責任、情報の受け取り方や解釈の多様性について考えさられました。

■この本をより楽しめる情報

この作品は、週刊文春ミステリーベストテンで1位、本屋大賞で2位を獲得するなどの

また横山秀夫氏は作家になる前に、群馬県の上毛新聞社に入社し、12年間記者として勤務していました。この貴重な経験は、『クライマーズ・ハイ』に大きく影響を与えています。特にジャーナリストとしてのリアルな視点と、報道現場の生々しい描写が見どころです。


予告された殺人の記録 / G. ガルシア=マルケス (新潮文庫)

■実際に起こったラテンアメリカの事件を元にした物語を読みたいあなたにおすすめ1冊

町をあげての婚礼騒ぎの翌朝、充分すぎる犯行予告にもかかわらず、なぜ彼は滅多切りにされねばならなかったのか?閉鎖的な田舎町でほぼ三十年前に起きた幻想とも見紛う殺人事件。凝縮されたその時空間に、差別や妬み、憎悪といった民衆感情、崩壊寸前の共同体のメカニズムを複眼的に捉えつつ、モザイクの如く入り組んだ過去の重層を、哀しみと滑稽、郷愁をこめて録す、熟成の中篇。

引用元:「BOOK」データベースより

興味深い質問

「実際に起こった事件ですか?」

「はい。そうなんです」
この物語は、著者が育ったカスピ海に面したコロンビアのスクレという田舎町で実際に起こった悲劇的な事件に着想を得ています。そして、その登場人物たちも家族や親族は、物語のキャラクターの創造において重要な役割を果たし、事件の関係者や証人としても関わっていました。

■参加者が盛り上がったところ

「出版されたのは数十年後」

著者はこの事件についてのルポルタージュ小説を書くことに非常に興味を持っていました。が、事件には親族や知人が深く関与していたため、母親からはこの題材を取り扱うことに強く反対されました。

そのため、マルケスはこの事件にについての小説を世に送り出すまで何十年も延期せざるを得なくなりました。最終的にこの物語を出版したのは、関係者が亡くなったり、影響を受けなくなったりした後のことです。

■この本をより楽しめる情報

「ガルシア・マルケス自身が最高傑作」

ガルシア・マルケスといえば、『百年の孤独』や『族長の秋』といった壮大な作品で広く知られていますが、彼自身はこの『予告された殺人の記録』を自らの最高傑作と評しています。

この作品は中編小説の長さでありながら、情報量が非常に豊富で、その濃密さは読者を圧倒します。物語は、愛、名誉、そして社会的慣習というテーマを巧みに織り交ぜ、複雑な人間関係と心理描写を緻密に描き出しています。


もののふの国 / 天野 純希 (中公文庫)

■「螺旋プロジェクト」中世・近世の対立を読みたいあなたにおすすめ1冊

武士とは、何だったのか?
千年に亘る戦いの系譜を一冊に刻みつけた、驚愕の傑作歴史小説。
〈螺旋プロジェクト〉中世・近世篇。

負け戦の果てに山中の洞窟にたどり着いた一人の武士。死を目前にした男の耳に不思議な声が響く。「そなたの『役割』はじきに終わる」。そして声は語り始める。かつてこの国を支配した誇り高きもののふたちの真実を。源平、南北朝、戦国、幕末。すべての戦は、起こるべくして起こったものだった――。

引用元:「版元ドットコム」より

興味深い質問

「どっちが海族、山族なんですか?」

鎌倉〜戦国〜幕末と日本の歴史を海族vs山族という独特な視点で描いています。具体的には平氏と源氏、織田信長と明智光秀といった、歴史上の人物が海と山を象徴しています。二つの一族の対立と交流を軸に物語が展開されます。

■参加者が盛り上がったところ

「螺旋プロジェクト」

『もののふの国』は、螺旋プロジェクトというユニークな共通ルールのもとに企画された歴史物語シリーズです。このプロジェクトでは、「原始から未来までの歴史をみんなで一斉に書く」という挑戦的なコンセプトのもと、8人の著名な作家たちが各々の視点から物語を綴っています。伊坂幸太郎氏や朝井リョウ氏といった有名な作家の参加も話題を集めています。

参加者のひとりは、朝井リョウ氏『死にがいを求めて生きてるの』という小説が同氏の作品中で一番と推せるほど素晴らしい内容だと断言していました。

■この本をより楽しめる情報

螺旋プロジェクトの中で、中世・近世のパートを担う作品。対立をテーマとした短編集です。この作品を読むことで他の螺旋プロジェクト作品も読んでみたくなる一冊です。


あの本は読まれているか / ラーラ・プレスコット (創元推理文庫)

■当時の反体制的な禁書を巡るスリリングな物語を読みたいあなたにおすすめの1冊

冷戦下のアメリカ。ロシア移民の娘であるイリーナは、CIAにタイピストとして雇われる。だが実際はスパイの才能を見こまれており、訓練を受けて、ある特殊作戦に抜擢された。その作戦の目的は、反体制的であるとして共産圏で禁書とされた小説『ドクトル・ジバゴ』をソ連国民の手に渡し、言論統制や検閲で迫害をおこなっているソ連の現状を知らしめること。――

引用元:「版元ドットコム」より

興味深い質問

「恋愛要素もあるんですか?」

ロシア移民の娘であるイリーナがスパイとして共産主義圏に禁書を届けるというミッションに関わるスリリングな展開を描いています。しかもミステリー小説としても分類されていてますが、特に驚きなのは、このような厳格で緊張感あふれるスパイ活動の中にも、恋愛要素が織り交ぜられている点です。

多くの人が思うように、スパイは通常、感情を抑えて任務に従事することが求められますが、イリーナの感情的な側面にも焦点を当たっています。

■参加者が盛り上がったところ

「ドクトルジバゴ」

紹介が進むにつれ、物語に登場する禁書「ドクトル・ジバゴ」に対する興味が高まりました。著者であるボリス・パステルナークはロシア出身の著名な作家です。「ドクトル・ジバゴ」は彼の代表作の一つであり、実際にインターネット上で購入することが可能です。

しかしながら、この本の定価が8,800円(税込)であることが判明し、その高価格には参加者全員が驚きを隠せませんでした。この価格は、一般的な単行本の小説と比べてかなり高いものですが、「ドクトル・ジバゴ」の文学的な価値と歴史的重要性を考慮すれば、その価格は納得できる範囲内かもしれません。

■この本をより楽しめる情報

アメリカでの出版契約金が200万ドル(約2億円)という驚異的な額で注目を集め、本国で初版20万部を発行し、世界30か国での翻訳されています。また、この作品は、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)主催の2020年エドガー賞最優秀新人賞にノミネートされるなど、国際的にもその文学的な質と独自性が高く評価されています。


【まとめ】

今回の読書会で特に注目を集めたのは、戦時中のロシア、ドイツ、ヨーロッパ諸国を舞台にした小説でした。このような歴史的背景に基づく小説は、RENSの読書会でたまに取り上げられており、参加者の間で高い関心があります。
これらの時代背景やテーマをもとにした読書会も開催したいと思いました。

さて、来週はフランスの大文豪バルザックの人間喜劇第2弾の『ラブイユーズ読書会』です。興味のある方はご連絡お待ちしております。

関連記事一覧