「芥川賞」「直木賞」(候補作を含む)読書会 / (2023年3月4日)
2023年3月4日の読書会
今回は読書好きにとっては、特別な想いがありそうな「芥川賞」と「直木賞」です。その受賞作品について話をしました。この二つの文学賞を受賞する作品は、時代背景や社会の情勢とともに変化し、また象徴的なものがあります。
当時読んだことがある作品や、話題になった作品もあり、感慨深くスタートしました。
むらさきのスカートの女 / 今村 夏子
■不気味でミステリアスな純文学を読みたいあなたにおすすめの1冊
「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性が気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導し……。
引用元:「版元ドットコム」より
■興味深い質問
「気になった知らない人を職場に引き込んだりしたいですか?」
■参加者が盛り上がったところ
「読書会に参加している自分と、職場での自分は全く別物なんです」
生活やプライベートと完全に切り離した職場での”自分”の話題で盛り上がりました。
■この本をより楽しめる情報
第161回の芥川賞受賞作。
受賞後に一般読者から「何も起こらないのに怖い」とTikTokに投稿したことで再燃しています。
17言語で23カ国の地域でも翻訳され、世界的にも注目の話題作。
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テスカトリポカ / 佐藤 究
■壮大なノワール小説を読みたいあなたにおすすめの一冊
メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、対立組織との抗争の果てにメキシコから逃走し、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会った。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向かう。川崎に生まれ育った天涯孤独の少年・土方コシモはバルミロと出会い、その才能を見出され、知らぬ間に彼らの犯罪に巻きこまれていく――。海を越えて交錯する運命の背後に、滅亡した王国〈アステカ〉の恐るべき神の影がちらつく。人間は暴力から逃れられるのか。心臓密売人の恐怖がやってくる。誰も見たことのない、圧倒的な悪夢と祝祭が、幕を開ける。
引用:「版元ドットコム」より
■興味深い質問
「タイトルのテスカトリポカってなんですか?」
■参加者が盛り上がったところ
「ネタバレしてもこの人の小説は面白い」
ほかの参加者も著者である佐藤究さんを高く評価されていました。『テスカトリポカ』は読んでなくても、内容を聞いているだけで圧倒されました。
■この本をより楽しめる情報
第165回直木賞受賞作。そして第34回山本周五郎賞受賞作。
膨大な参考文献から抽出される物語、圧倒的な情報量の多さがこの小説の緻密さを裏付けています。
■この記事の詳細はこちら
少年と犬 / 馳 星周
■苦境に悩む人、犬が好きな人におすすめの1冊
傷つき、悩み、惑う人びとに寄り添っていたのは、一匹の犬だった――。
2011年秋、仙台。震災で職を失った和正は、認知症の母とその母を介護する姉の生活を支えようと、犯罪まがいの仕事をしていた。ある日和正は、コンビニで、ガリガリに痩せた野良犬を拾う。多聞という名らしいその犬は賢く、和正はすぐに魅了された。その直後、和正はさらにギャラのいい窃盗団の運転手役の仕事を依頼され、金のために引き受けることに。そして多聞を同行させると仕事はうまくいき、多聞は和正の「守り神」になった。だが、多聞はいつもなぜか南の方角に顔を向けていた。多聞は何を求め、どこに行こうとしているのか……
引用元:「版元ドットコム」より
■興味深い質問
「犬は人間よりも人間の感情を理解していますよね?」
■参加者が盛り上がったところ
「犬好きですけど、飼うと別れがつらいので飼いません」
参加者の全員が犬好きでしたが、やはり実際に飼うとなると違います。作中にもありますが、現在ではペットショップ等で売られている犬に、マイクロチップを装着することが義務化されているようです。
■この本をより楽しめる情報
第163回直木賞受賞作。
選考委員の北方譲三さんから「犬が書かせたのではないか、という気さえする。」とまで言わせたリアリティのある描写が光ります。
コンビニ人間 / 村田 沙耶香
■「普通とはなにか?」を考えるあなたにおすすめの1冊
36歳未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目の古倉恵子。
引用元:版元ドットコム
日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、
「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる――。
「いらっしゃいませー!!」
お客様がたてる音に負けじと、今日も声を張り上げる。
ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、
そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられるが……。
■興味深い質問
「普通ってなんですか? 考えることがあります」
■参加者が盛り上がったところ
「受賞当時、そんなにインパクトはありませんでした」
2016年に受賞直後に読んだときの印象はほとんどなく、しかし、この読書会で紹介され改めて向き合ってみると、まさに時代を切り取ったような鋭い作品であることがわかりました。
■この本をより楽しめる情報
第155回芥川賞受賞作。
累計で92万部と突破、世界角国の20カ国語で翻訳も決定しています。
現代の「プロレタリア文学」と称されることもあり、働くことについて考えさせられる一冊です。
【まとめ】
さすが「芥川賞」と「直木賞」の受賞作ともあり、どれも物語としての質が高かったです。
ただ読書を楽しむだけではなく、現代社会における「少数派」の生き方や、存在意義についても考えさせられました。
まだまだ多くの上質な小説がある「芥川賞」「直木賞」、期間をあけてまた開催したいと思います。