海外小説読書会で紹介された『モモ』 / ミヒャエル・エンデ(2023年1月21日)
日々を忙しく過ごすあなたにおすすめの一冊です。
「児童書として有名な作品ですが、読んでみると大人向けだったんです。しかも現代人にこそ見つめ直すべき”時間の価値”が描かれています」
子供たちにとって読みやすい物語になっている一方で、大人向けの内容を含んでいる。そういった意味ありげな様子でした。
「はたして子供が読んで、多くを理解できるのでしょうか」
子供が理解できるかは、年齢や理解力によって異なります。が、この場合においては彼らの経験値、”時間の価値”が日常的にどれほど重大であるか、その比重によるのかもしれません。
舞台演劇としても広く知れ渡っている『モモ』
紹介者された方は、『モモ』を10年ほど前から知人に薦められていたようです。
また小説にも演劇にも明るかったらしく、興味は持ちつつ、なかなか読む機会がありませんでした。
そして長い時間をかけて読み、この読書会で紹介してくれました。
「本を読むことが好きです」
余談ですが、紹介された方は読書会が始まる前の雑談でこう公言してくれました。
こんなにもストレートに堂々と言われたことはあまりなかったので、とても清々しい気分になったことを覚えています。
【あらすじ】
「町はずれの円形劇場あとにまよいこんだ不思議な少女モモ。町の人たちはモモに話を聞いてもらうと、幸福な気もちになるのでした。そこへ、「時間どろぼう」の男たちの魔の手が忍び寄ります…。「時間」とは何かを問う、エンデの名作。――
(引用元:「BOOK」データベース)
「この小説っていつ書かれたのでしょうか?」
1973年に出版されています。
『モモ』には古いイメージがあり、100年ぐらい前の作品だと思っていたので、意外と近代に書かれていたことに驚きました。
物語の舞台がどの場所なのか、具体的な説明はありません。ただ、都会から外れた円形劇場、ビルディング、車といったワードから連想するに時代設定も出版されたあたりなのではという推測が飛びました。
序盤はモモや登場人物の説明が続き、あまり物語は動かなくて、少し味気がなかったようです。
「時間の倹約?」インチキ
いよいよ、「時間泥棒」である灰色の男たちの登場。
無駄な時間は徹底的に排除すべきだ。
無駄な時間は「時間貯蓄銀行」に預ければいい。
時間泥棒は、睡眠、仕事、食事、セキイインコ、合唱、買い物……といった時間の配分を事細かくわけてどこに無駄があるのか、とうとうと説明をするシーンがあります。
「巧みな口上で誘導する姿はまるで詐欺師です!」
全然違いますが、連想されたのは
「タバコを吸わないと車が買えます」
禁煙することにより、健康が維持・向上します。さらに、禁煙することで、タバコ費用を節約することができます! 具体的には、1日1箱の場合でも、1年間で約〇〇円の節約ができーー。というような。
『空白恐怖症』
「なんですか? それ」
「スケジュール帳に空白が多く、予定が記入されてい ない状態に不安を感じること。そういう気持ちになることを病気の症状になぞらえた言葉」のようです。(引用元:デジタル大辞泉)
忙しい現代人は、自ら忙しくしているのかもしれません。
しばらく自分は『空白恐怖症』なのか、考えました。
時間的な余裕は、色々なストレスから解放され、自分自身を見つめ直す良い機会です。その時間に脳をリフレッシュさせて想像力を養うこともできるのではないでしょうか。
大人になった今こそ、じっくりと読んでみたいと思いました。
【この本をより楽しめる情報】
ドイツ児童文学賞の受賞作。児童書としても名作ですが、実は日々を忙殺される現代の大人こそ楽しめる一冊。舞台演劇やミュージカルにもなっていて、いろんな角度から『モモ』を鑑賞することがきます。
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