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2023年1月8日の読書会

この本とても面白いのにまわりに読んだ人がいない、そんな経験ありませんか?
有名な小説でもかなりマニアックなものでもどんとこい、ということで開催しました。
その中から紹介してくださった本たちです。

人間の絆 / サマセット・モーム

■腰をすえてゆっくりと読みたい一冊

“幼くして両親を失い、牧師である伯父に育てられた青年フィリップ。不自由な足のために劣等感にさいなまれて育ったが、いつしか信仰心を失い、芸術に魅了されてパリに渡る。しかし若き芸術家仲間と交流する中で、自らの才能の限界を知り、彼の中で何かが音を立てて崩れ去る。やむなくイギリスに戻り、医学を志すことになるのだが……。

 引用:版元ドットコム

■興味深い質問

「程度は違えど自分(読んだ人)の人生とオーバーラップする部分があるのでしょうか?」
物語の中の主人公の人生にはさまざまな起伏があるようです。

■参加者が盛り上がったところ

同じモームの作品である『月と六ペンス』との比較。
紹介された方が、ほかの読書会に参加されたときに『月と六ペンス』の紹介が意外と多かったようです。
2作とも主人公が歩んだ軌跡を辿っていく物語でありながら、異なる印象。

■この本をより楽しめる情報

サマセット・モームの自伝的小説の側面もあり、著者自身の根底にあるものが垣間見えるのかもしれません。(もちろん『人間の絆』はフィクションであるので、すべてが事実というわけではありません)
『月と六ペンス』と並ぶサマセット・モームの代表作。

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ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語
ティーショップ

■不思議でスマートな短い物語を読みたいときにおすすめの1冊

駅前のティーショップで謎の「物語でできたお茶」を注文した女。普段は冒険などとんでもない女だったが、たまたま鉄道駅で待ち時間ができてしまったその日に限って、違うことがしてみたくなる。メニューの中から一番変わった「物語でできたお茶」を注文すると、お茶を運んできたウェイターが失踪した死刑執行人の物語を語り始める。ウェイターが話を終えると、次にレジ係が、そして店にいた客までもが席にやってきて、ひとりずつ話の続きをつむいでいく。――

引用元:黒田藩プレス

■興味深い質問

「世にも奇妙な物語的なあれですか?」

■参加者が盛り上がったところ

「輪廻というか、物語が輪舞するんです」

紹介された方はそれほど短編小説を読まないようですが、この短編『ティーショップ』が特に好きで、こう表現してくれました。

■この本をより楽しめる情報

著者は、旧ユーゴスラビア出身の作家でSF・ポストモダン・シュールレアリスムといった変幻自在の作風で、東欧のボルヘスとも称されるとか。

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青い脂 / ウラジーミル・ソローキン

■変態歴史SF小説&文学クローンの文体模写が気になるあなたにおすすめの1冊

2068年、雪に埋もれた東シベリアの遺伝子研究所。トルストイ4号、ドストエフスキー2号、ナボコフ7号など、7体の文学クローンが作品を執筆したのち体内に蓄積される不思議な物質「青脂」。母なるロシアの大地と交合する謎の教団がタイムマシンでこの物質を送りこんだのは、スターリンとヒトラーがヨーロッパを二分する1954年のモスクワだった。ーー
現代文学の怪物ソローキンの代表作、ついに翻訳刊行。

引用元:版元ドットコム

■興味深い質問

「この小説は一応SFに該当するんですよね?」
カテゴリを設定するのであればSF小説かもしれませんが、その枠からはみ出していると思います。

■参加者が盛り上がったところ

紹介者(私)がどうしてもこの小説を話たかったので、若干空回りをしていたのかもしれません。
あまりにも私の説明がちらかっていたので「この小説を読んだ他の方ともう少し話したそうですね」というフォローのお言葉をいただきました。
ありがとうございました。

■この本をより楽しめる情報

とにかくロシアの文豪を真似た文体模写が面白くて、ロシアでは『青い脂2号』なるWEBサイトが存在したらしいです。
また時代背景やロシア作家についての予備知識がなくても、ハマる人はそのとんでもない熱量にやられてハマると思います。


井上靖 未発表初期短篇集

■”井上靖”フリークにおすすめの1冊

文壇に登場する以前、雌伏と暗中模索の戦前期に書かれた作品群を初公刊。ユーモア・ミステリ・時代物と、多彩なジャンルで自らの可能性を試していた、昭和の文豪の知られざる20代の軌跡。未発表のまま長くしまわれていた、戦後唯一の戯曲も併せて収録。

引用元:版元ドットコム

■興味深い質問

「コップの中の半分の水とは?」
これをポジティブとらえるのか、ネガティブに考えるのか?
作中のユーモア小説にはそういった要素もあるようです。

■参加者が盛り上がったところ

作品の内容とは関係がありませんが、紹介された方がこの小説に出会ったエピソードです。
紹介された方が学生時代にある場所へ遠征したときに偶然見つけた古本屋さん、そこの女性店員に「こっちの本の方が面白いよ」と言って薦められた本がこの『井上靖 未発表初期短篇集』ということです。

■この本をより楽しめる情報

歴史小説、時代小説から自伝的な小説までさまざまな代表作がある言わずと知れた大作家。
「あすなろ物語」「しろばんば」懐かしいと話し合いました。教科書にも載っている作品がたくさんあります。


双生児 / クリストファー・プリースト

■良質なメタフィクション的歴史改変小説を読みたいときの1冊

1999年英国、著名な歴史ノンフィクション作家スチュワート・グラットンのもとに、第二次世界大戦中に活躍した空軍大尉J・L・ソウヤーの回顧録のコピーが持ちこまれる。グラットンは、次作の題材として、第二次大戦中の英国首相ウィンストン・チャーチルの回顧録のなかで記されている疑義-英空軍爆撃機操縦士でありながら、同時に良心的兵役拒否者であるソウヤーなる人物(いったい、そんなことが可能なのか?)-に興味をもっており、雑誌に情報提供を求める広告を出していた。――

引用元:版元ドットコム

■興味深い質問

「ルドルフ・ヘスという人物をご存知でしょうか?」
「……知りません」
「手塚治虫の漫画であったような、いや違うか」

■参加者が盛り上がったところ

「語りと騙り」
歴史認識において情報の取捨、語り手の加工の産物とは、その筋道はひとつではなくいくつも枝分かれして創造されていくのではないでしょうか。

■この本をより楽しめる情報

アーサー・C・クラーク賞、英国SF協会賞受賞作。
ほかにも『魔法』や『奇術師』といった作品を併せて読むと、著者の理解が深まります。

【まとめ】

例え知名度のある小説でも、あなたの周囲には読んだ人がいないこともよくあります。
「では、なぜその小説を読むことになったのか?」今回は、紹介された方とその小説の出会いという物語も興味深かったです。
「覚えていない」買うことになった動機が定かではなくても読んでみると面白かった。これもまた痛快です。

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