2022年ベスト本読書会で紹介された 『虚魚』 / 新名 智 (2023年1月3日)
「ホラーとミステリーのハイブリット小説を読んでみたくなりませんか?」
2023年の読書会第1冊目として紹介されました。
『虚魚』、まずタイトルの読み方がわかりません。きょぎょ? うつろさかな?
”そらざかな”と読むそうです。
「そらざかなってなんですか? どういう意味ですか?」
虚魚(そらざかな)というのは、釣り人が釣った魚の大きさを自慢するために実際のサイズより大きく公言するであったり、釣り仲間の間で話されるけれど、実在しない魚。のようです。
逃がした魚は大きいで的な、釣り人が自慢するあれなんでしょうか。
意味を知ってしまうと、何か釣りに関するホラー&ミステリーなのかと想像しました。
ホラー要素もあるので『虚魚』という文字が持つ薄気味の悪さを感じながら、その話を聞きました。
【あらすじ】
“体験した人が死ぬ怪談”を探す怪談師の三咲は、“呪いか祟りで死にたい”カナちゃんと暮らしている。幽霊や怪談、呪いや祟り、オカルトや超常現象。――
(引用元:版元ドットコム)
ある日、「釣り上げた人が死んでしまう魚がいる」という噂を耳にした三咲は、その真偽を調べることにする。ある川の河口で似たような怪談がいくつも発生していることがわかり、ふたりはその発生源を求めて、怪異の川をたどっていく。“本物”の怪談に近づくうち、事情を抱えるふたりの関係にも変化がおとずれて――。
選考委員の絶賛を浴びた第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞<大賞>受賞作。
単行本の巻末には、著者から「第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞」受賞の言葉が掲載。
また作品の理解として、綾辻行人氏や有栖川有栖氏ほかの選評も興味深いそうです。
だいたい怪談師なんて稲川淳二さんしか知らない!
主人公が怪談師、「釣り上げた人が死んでしまう魚がいる」という噂――。この設定からしてすでに面白そうと盛り上がりました。
同居人のカナちゃんもなかなかパンチの効いた(“呪いか祟りで死にたい”)エピソードがありそうです。
メインになるふたりが女性で、しかもひとクセありそうで心を引くように描かれているそうです。
ただのホラー&ミステリー小説だけではなく、登場人物の心の動きも見どころのひとつです。
身近にある怖い話
怪談なんて学生の頃こそよく聞きましたが、大人になると夏でもほとんど興味が向かなくなっていました。たまにテレビで流れる話に耳を傾けるくらいです。
この小説の作中作として語られる「釣り上げた人が死んでしまう魚がいる」という怪談エピソードが軸になって物語が展開していきます。
怪談をずっと調査していく過程にはやはり嘘やデマ、情報の錯綜があります。
「怪談エピソードってどうやって作られると思いますか?」
考えたこともありませんでした。が、怪談エピソードを考えたことはあります。
怪談エピソードのすべてが実際に起こったことだというのはにわかに信じられません。ただ、何か元になる事件があってそこから脚色されてできあがるのではないでしょうか。
秀逸な怪談はとてつもない勢いで伝播して、そして様々な脚色がされて、枝分かれしていくーー。
「なんかSNSとかネット記事の情報と似ていますね」
この追跡劇がとても面白くて、ページをめくる手が止まらないようです。
内面に切り込んだ心理描写
三咲とカナちゃんには明確な目的があるようです。
ふたりの淡い想いや、内面をうまく表現しているとも言っていました。
「そういえば、主人公や登場人物が物語の成長していく過程を描いている小説はとても優れた小説だと聞いたことがあります」
紹介された方は、そう締めくくっていました。
年始1作目にふさわしい盛り上がりでした。
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