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小説限定(ジャンルは自由)読書会 2024年7月6日(土)

今回も小説限定の読書会が開催されました。
各作品についての詳細な紹介を交えながら、参加者たちのリアルな感想や意見もご紹介します。
これを通じて、少しでも新たな作品に興味を持っていただければ幸いです。

内容にはネタバレも含んでいますので、ご注意下さい。


逆転美人 / 藤崎 翔 (双葉文庫)

■見た目に関する偏見に興味があるあなたにオススメの一冊

「私は報道されている通り、美人に該当する人間です。でもそれが私の人生に不幸を招き続けているのです」飛び抜けた美人であるせいで不幸ばかりの人生を歩むシングルマザーの香織(仮名)。娘の学校の教師に襲われた事件が報道されたのを機に、手記『逆転美人』を出版したのだが、それは社会を震撼させる大事件の幕開けだった――。果たして『逆転美人』の本当の意味とは!? ーー

引用元:「双葉社」より

■興味深い質問

「美人が不遇?」

「『飛び抜けた美人だからって、不幸な人生になることなんてあるの?』って思うかもしれませんけど、実際にあるんですよね。美人って、どうしても周りから妬まれたり嫉妬されたりしやすいんです。そのせいで、いじめられたり仲間外れにされたりすることも。リアルな社会でも、見た目が原因で孤独やつらい思いをすることって、意外とあるんですよね」

■参加者が盛り上がったところ

「見た目で判断しない」

「『人は見た目が9割』や『ルッキズム』という言葉が象徴するように、無意識のうちに外見に大きな影響を受けてしまいますよね。見た目に囚われず、その人の内面や本質をどう見るべきか、現代社会において関心の高いテーマです。

■この本をより楽しめる情報

帯には「ミステリー史上初の伝説級トリックを見破れますか?」と、挑戦的なコピーが興味を引きつけます。巧妙に仕掛けられたトリックだけではなく、現代社会で注目される「ルッキズム」問題にも鋭く切り込んでいます。


愛はさだめ、さだめは死 / ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア (ハヤカワ文庫)

予見的な未来を描いた作品に興味があるあなたにオススメの一冊

冬の到来におびえる異星種族の壮絶な愛の儀式、コンピュータに接続された女の悲劇、ユカタン半島に不時着した男女を襲う意外な運命……華麗なテクニックと斬新なスタイルで七〇年代のSF界を席巻したティプトリーが、万華鏡的イメージで読者に未来をかいま見せた傑作短篇集! ーー

 引用:「ハヤカワオンライン」より

興味深い質問

「どの短編が面白かったですか?」

「接続された女」です。
この短編は1970年代に書かれたにもかかわらず、バーチャルなアバターが登場するなど、現代のデジタル社会をまるで予見していたかのような内容がかなり印象的でした。

■参加者が盛り上がったところ

「広告禁止」

「接続された女」の内容で、容姿に恵まれない女性が企業の地下で幽閉され、ケーブルでつながれた状態で絶世の美女ロボットを遠隔操作し、広告塔として活躍する――。見た目に囚われる社会や広告のあり方への批判もあります。
「さっきのルッキズムのテーマに触れていて、けっこう現代を予見した内容に驚きました」

■この本をより楽しめる情報

この作品は、「ネビュラ賞」と「ローカス賞」の短編部門を受賞した、SFファン必見の名作です。未来社会やテクノロジーの進化がもたらす影響を鋭く描き、現代社会の問題を予見するかのようなストーリーが多数収録されています。


四畳半神話大系 / 森見 登美彦 (角川文庫)

■ちょっと不思議なユーモアが効いた青春小説を読みたいあなたにオススメの一冊

妄想してないで、とっとと恋路を走りやがれ!
私は冴えない大学3回生。バラ色のキャンパスライフを想像していたのに、現実はほど遠い。できれば1回生に戻ってやり直したい! 4つの並行世界で繰り広げられる、おかしくもほろ苦い青春ストーリー。

引用元:「KADOKAWA」より

興味深い質問

「実際の体験談ですか?」

「著者は実際に京都に住み、京都大学に通っていたため、作品の一部に自身の体験が反映されている可能性があると思いますよ」
ただ、作品の独特でぶっ飛んだ世界観を考えると、すべてが実体験に基づいているわけではないでしょう。特徴的なユーモアと想像力が存分に発揮されたフィクション作品です。

■参加者が盛り上がったところ

「ひねくれている人」

森見登美彦さんの作品には、”ひねくれた”キャラクターが多いですよね?
「確かにそうですねー。ただ”ひねくれた”というより、知的な嫌味やブラックユーモアが際立ちます。言葉選びが秀逸で、少し皮肉めいたセリフや、ひねった言い回しがキャラクターたちの魅力的ですね」
そんな独特のユーモアが、森見作品の世界観をより味わい深くしています。

■この本をより楽しめる情報

森見登美彦さんといえば、この作品を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
京都を舞台に繰り広げられる、ちょっと不思議な青春小説として、多くの読者に愛されています。
また作品はアニメ化もされており、映像でもその独特の世界観が楽しめる名作です。


竜馬がゆく / 司馬 遼太郎 (文春文庫)

歴史的な転換期、坂本龍馬に興味があるあなたにオススメの一冊

青春小説の名作が読みやすくなって再登場。前半は、奥手だった幼年期から、剣術修行、脱藩、勝海舟との出会いと海軍塾設立までを描く

 引用:「文藝春秋BOOK」より

興味深い質問

「経営者?」

「『竜馬がゆく』は、経営者が愛読書として挙げることが多い作品の一つですよね?」
「経営者の方々は歴史小説を好む傾向があり、その中でも坂本龍馬の生き方が特に共感を呼ぶのではないでしょうか。挑戦し続け、未来を切り開く姿勢が、現代のビジネスにも通じるものがあるのかもしれません」

■参加者が盛り上がったところ

「龍馬伝」

「NHK大河ドラマ『龍馬伝』は、2009~2010年に放送され、大変話題になりましたね」
主演の福山雅治さんが演じる坂本龍馬。人間愛やヒューマニズムに溢れ、キャラクターへの深い愛情が感じられる作品でした。

■この本をより楽しめる情報

ドラマ化され、国民的ベストセラーとなっている作品です。経営者にも愛されており、挑戦する姿勢や未来を切り開く力強いメッセージが共感を呼んでいます。坂本龍馬という歴史上の人物を知らない日本人はほとんどいないでしょう。この作品を通じて、さらに深く龍馬の魅力に触れてみてください!


身代わりの女 / シャロン・ボルトン (新潮文庫)

驚愕の結末、謎めいたキャラクターに興味があるあなたにオススメの一冊

卒業を間近に控えたパブリック・スクールの優等生6人が自動車で逆走。母娘3人の命を奪う大事故を起こしてしまう。20年後、一人で罪を被り刑期を務めあげたメーガンが、国会議員、辣腕弁護士ら、いまや成功を収めている5人の前に姿を現す。彼らと交わした“約束”を果たさせるために……。身代り契約の果ての惨劇を、周到に仕組まれたプロットと圧倒的筆力で展開する、予測不能サスペンス。

 引用:「新潮社」より

興味深い質問

「上半期で1番の作品ですか?」

この小説を紹介してくれた方は、普段から多くの小説を読んでいて、特にミステリー小説が好きな方です。その方が「上半期で一番面白かった」と太鼓判を押すほどの作品なので、他の参加者も興味津々でした。

■参加者が盛り上がったところ

「何をするのかわからない女」

「この小説に登場する“身代わりの女”がとにかく目が離せません。何をしでかすのか予測できない彼女の行動に、読んでいるうちにどんどん翻弄されます。次はどんな展開が待っているのか、ページをめくる手が止まりません!」

ホラーのような不気味さを漂わせ、背筋がひんやりする場面もあるのでしょうか。

■この本をより楽しめる情報

イギリスの権威ある「英国推理作家協会賞」にノミネートや受賞歴のある著者の話題作。タイトルからしてインパクト大の『身代わりの女』。その予測不能な展開と謎めいたキャラクターが、読者を最後まで釘付けにします。驚きと緊張感が続く、息もつかせぬスリリングな一冊です。


夜明け前のセレスティーノ / レイナルド アレナス (国書刊行会)

現実と非現実の境界に興味があるあなたにオススメの一冊

――〈この家はいつも地獄だった。みんな死んでもないのに、もうここでは死んだ人たちの話ばっかり。……でも暮らしがほんとに悪くなったときだった。セレスティーノが詩を書こうと思いついたのは。かわいそうなセレスティーノ! いまぼくには彼が見える。居間のドアの陰に坐って両腕を引き抜いている……〉
母親は井戸に飛びこみ、祖父は自分を殺そうとする。
寒村に生きる少年の目に鮮やかに映しだされる、現実と未分化なもう一つの世界。
ラテンアメリカの魔術的空間に、少年期の幻想と悲痛な叫びが炸裂する!
『めくるめく世界』『夜になるまえに』のアレナスが、さまざまな手法を駆使して作り出した奇跡の傑作。——

 引用:「国書刊行会」データベースより

興味深い質問

「小説を読んでいて、ときどき見られる行と行の間の空白に何を感じますか?」

著者のアレナスは、「主人公の現実・非現実の移動を示すこともあれば、音楽の休符、あるいは自然の音の途切れーー」と語ります。「普段、行間について深く考えることはなかったので、この言葉はまさに目からウロコでした。小説を読む際に、行間を感じ取るという新しい楽しみ方を見つけました」

■参加者が盛り上がったところ

「幻想」

ラテンアメリカ小説ならではの魅力が詰まったこの小説には、幻想的なシーンが随所に散りばめられています。それは全くの非日常ではなく、リアルな世界の一部として描かれており、どこか現実と幻想が溶け合うような独特の雰囲気があります。
「ホラーとは一味違い、不思議な感覚に引き込まれます」

■この本をより楽しめる情報

本作『夜明け前のセレスティーノ』から続く、著者アレナスの代表作である五部作《ペンタゴニア》は、5つの異なる苦悩を描いた作品です。各作品でテーマや主人公のモチーフに一貫性があることから「五部作」とされていますが、ストーリーや世界観には直接的なつながりはありません。(残念ながら、日本ではすべてが翻訳されているわけではありません)




【課題本一覧】
星を編む / 凪良 ゆう ←10月19日(土)開催予定    
幻滅 / バルザック   ←11月23日(土)開催予定
重力の虹 / トマス・ピンチョン ←12月21日(土)開催予定
金閣寺 / 三島由紀夫   ←未定(参加希望者が2名以上になれば)
海と毒薬 / 遠藤周作        〃

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