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小説限定(ジャンルは自由)読書会 2024年3月30日(土)

今回もさまざまな小説が取り上げられました。
では早速、各作品についての紹介と参加者の感想をご紹介します。

内容にはネタバレも含んでいますので、ご注意下さい。


ウナギの罠 / ヤーン・エクストレム(扶桑社ミステリー)

■スウェーデン版クラシック推理、独特な設定が好きなあなたにおすすめの1冊

ウナギ漁のための小部屋のような仕掛け罠のなかで、地元の大地主の死体が発見された。
入り口には外から錠がかけられ、鍵は被害者のポケットに――
そう、完璧な密室殺人だったのだ。
さらに、遺体には一匹のウナギがからみついていた! 
被害者をめぐる複雑な人間関係、深まる謎また謎……

引用元:「扶桑社」より

■興味深い質問

「動物が登場して活躍するんですか?」

この小説では、動物たちも物語に関わっています。具体的な活躍の仕方を説明するのは難しいですが、彼らはただの背景ではなく、重要な役割を担っているのです。
「動物が会話することはありませんよね?」
「探偵のように?」
「まさか」

■参加者が盛り上がったところ

「横溝正史っぽい世界観」

コテコテさがむしろ新鮮に感じました。物語はじわじわと緊張を高め、不穏な雰囲気、閉鎖的でどこか懐かしい中で進行します。舞台は1960年代のスウェーデンの小さな村で、この閉鎖された空間、緊迫感を増す密室劇が楽しめます。

■この本をより楽しめる情報

「スウェーデンのディクスン・カー」と評されるほど、著者の作品は不可能犯罪を巧みに描くことで知られています。また本作は、日本の推理小説家横溝正史の作品にも感じられる、独特の雰囲気と緊迫感が漂っています。


プロット・アゲンスト・アメリカ / フィリップ・ロス (集英社)

反ユダヤ主義の視点、歴史改変ものを読みたいあなたにおすすめの1

切手集めに情熱を注ぐフィリップ少年は7歳。
営業マンの父と快活な母、絵が上手な兄サンディとニュージャージーのユダヤ人地区で暮らしていた。
1940年、そんな平穏な生活を揺るがす大事件が起こる。
ヒトラーの友人であり反ユダヤ人主義のリンドバーグが、ローズヴェルトを破ってアメリカ大統領に当選したのだ。――

 引用:「集英社」より

興味深い質問

「リンドバーグってどんなイメージですか?」

チャールズ・リンドバーグは1927年に単独無着陸で大西洋を横断し、その偉業で一躍世界的に有名になりましたが、多くの人々はこのエピソード以外に彼のことをあまり知らないかもしれません。彼の多面的な人物像やその後の生涯は、この小説によって独自の視点から描かれています。(ただし創作ということも忘れずに)

■参加者が盛り上がったところ

「ガザ地区で起きている軍事衝突の見方が変わりました」

反ユダヤ主義者として描かれる主人公を通じて、政治的にも非常にデリケートな問題を取り扱っています。
ガザ地区の軍事衝突に対してどちらの側にも偏らず、異なる視点から問題を調整するような新しい感覚が生まれました。

■この本をより楽しめる情報

この作品はドラマ化もされており、ユダヤ人家族の視点からアメリカ社会の変貌を歴史改変という切り口で描かれています。
最近(2024年4月)に文庫版が発売されたため、この機会にぜひ手に取って読んでみてはいかがでしょうか。


銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件 / アンドリュー・カウフマン (東京創元社)

■不思議な物語とシュールなユーモアを読みたいあなたにおすすめ1冊

妻が奇妙な強盗事件に遭遇した。犯人は人々から「もっとも思い入れのあるもの」を奪っていったという。以来、なぜか妻の身長は縮んでいき……。/生まれつきの厄介な〈力〉に悩まされてきた五人兄妹。祖母から〈力〉を消してやると言われた三女は、ひと癖もふた癖もある兄妹たちを集めるため奔走する。──。

引用元:「東京創元社」より

興味深い質問

「そんなことになるんですか?」

この物語では、銀行強盗に巻き込まれた人々が信じがたい事態に見舞われます。夫が雪だるまに変わったり、心臓が時限爆弾になるなど、ありえない展開が連続し、読者を驚かせます。この極端で奇妙な状況は、「なんでこんなことになるのか」という驚きとともに、笑いを誘いました。

■参加者が盛り上がったところ

「不思議な出来事は比喩なのではないでしょうか」

例えば、緊張した時に心臓が激しく打つ感覚を、心臓が時限爆弾になるという極端な形で表現しているのではないでしょうか。このような飛躍した表現にユーモアがあります。日常生活での様々な感情や体験に違った視点を加えると面白いです。

■この本をより楽しめる情報

この小説は、日本で舞台化もされています。奇想天外な出来事が登場人物たちを取り巻くこの物語は、まるで子供向けのおとぎ話のように、大人たちにも夢中にさせる魅力を持っています。このユニークな「大人の童話」を楽しんでください。


厭魅の如き憑くもの / 三津田 信三 (講談社文庫)

■謎解きと神秘的な和風ホラーミステリーが好きなあなたにおすすめの1冊

神々櫛(かがぐし)村。谺呀治(かがち)家と神櫛(かみぐし)家、2つの旧家が微妙な関係で並び立ち、神隠しを始めとする無数の怪異に彩られた場所である。戦争からそう遠くない昭和の年、ある怪奇幻想作家がこの地を訪れてまもなく、最初の怪死事件が起こる。――

引用元:「講談社BOOK 倶楽部」より

興味深い質問

「読みにくくなかったですか?」

「はい、大丈夫でした」
昭和初期の因習に満ちた閉鎖的な集落や憑き物筋といった重苦しい世界観。それを表現するための文体なのでしょうか。
読みにくいという意見がありました。文体が合わずに挫折したという参加者からの質問でした。文体が読者によって印象が異なる点も、この小説の特徴的な要素の一つです。

■参加者が盛り上がったところ

「深夜2時の和室で読む」

この小説をより深く楽しむために、紹介者はまるで儀式のように、深夜二時の丑三つ時に読むことにしていました。しかも、和室で正座して読むという徹底ぶりです。
「雰囲気作りは大切ですよね」
「はい。キャラクターたちがしっかりと命を落としていきます」(あくまで創作の話ですから)
「それって怖くないですか?」
「大丈夫です」と落ち着いて答えていました。

■この本をより楽しめる情報

「刀城言耶(とうじょうげんや)」シリーズの第1長編は、本格ホラー推理小説の枠を超えて、オカルト、因習、閉鎖的な空間設定、そして村社会の中で起こる怪異も登場します。横溝正史に通じる世界観を持ち、これらの要素が組み合わさることで、読者は物語の中にに完全に引き込まれるでしょう。


アリアドネの声 / 井上真偽 (幻冬舎)

■無理難題に挑みたいあなたにおすすめ1冊

巨大地震発生。地下に取り残された女性は、目が見えず、耳も聞こえない。光も音も届かない絶対的迷宮。生還不能まで6時間。想像の限界を超えるどんでん返し。救えるはずの事故で兄を亡くした青年・ハルオは、贖罪の気持ちから救助災害ドローンを製作するベンチャー企業に就職する。業務の一環で訪れた、障がい者支援都市「WANOKUNI」で、巨大地震に遭遇。ほとんどの人間が避難する中、一人の女性が地下の危険地帯に取り残されてしまう。それは「見えない、聞こえない、話せない」という三つの障がいを抱え、街のアイドル(象徴)して活動する中川博美だった――。崩落と浸水で救助隊の侵入は不可能。およそ6時間後には安全地帯への経路も断たれてしまう。ハルオは一台のドローンを使って、目も耳も利かない中川をシェルターへ誘導するという前代未聞のミッションに挑む。

引用元:「幻冬舎」より

興味深い質問

「とても面白いですが、映画化は難しいですか?」

映画「インセプション」のようなヒット作はどうでしょう。
「『アリアドネの声』は視界が悪い地下という限定的な舞台設定で、しかも場面転換も少ないという点が特徴です。ストーリー的には「走れメロス」のような時間制限があり、それが緊張感を生み出し、見る者を引きつける要素となっていますが、映像化するにはいくつかの課題があります」

■参加者が盛り上がったところ

「福祉的な観点」

「この小説は、福祉の深い知識を持っている著者によって書かれたと感じられました」
初めは福祉に関する理解が不足しているかのような場面も見受けられますが、物語が進むにつれて、それらのシーンが意図的なものであったことが明らかになり、正確に訂正される場面があります。
障害者が日常でどのような困難に直面し、それをどのように乗り越えていくかの手順がまさに福祉の教科書の内容と同じです。
物語は神話を取り入れたミステリー要素もありますが、福祉の観点からこの作品のディテールが非常に優れ障害を持つ人のリアリティが垣間見えました。

■この本をより楽しめる情報

紹介者いわく「もう一回読みたい」ぐらい完成度の高いこの作品。著者は『恋と禁忌の述語論理』で第51回メフィスト賞を受賞され、ほかにも多くのミステリー文芸賞にランクインしています。またこの小説は、新聞の広告でも宣伝されていたようです。広告を見た人々は、タイトルや簡単なストーリーの紹介文から、興味を引かれたはずです。


大黒屋光太夫 / 吉村昭 (講談社文庫)

■生き残りをかけた歴史的な冒険の物語を読みたいあなたにおすすめの1冊

ロシア辺境の小島に漂着した光太夫の、帝都ペテルブルグに至るシベリア横断行。新史料を駆使した新しい大黒屋光太夫像。
天明2年(1782)、伊勢白子浦を出帆した回米船・神昌丸は遠州灘で暴風雨に遭遇、舵を失い、七カ月後にアリューシャンの小島に漂着した。沖船頭・光太夫ら十七人の一行は、飢えと寒さに次々と倒れる。ロシア政府の意向で呼び寄せられたシベリアのイルクーツクでは、生存者はわずかに五人。熱い望郷の思いと、帰国への不屈の意志を貫いて、女帝エカテリナに帰国を請願するが……。 

引用元:「新潮」より

興味深い質問

「いつも作成しているんですか?」

この小説の紹介をしてくれた人は、聞いている全員が内容をより深く理解できるように、日本からロシアのサンクトペテルブルクまでの航海をたどるこの物語の舞台となるルートを示す航海図を持参してくれました。この航海図には、物語のキャラクターたちが旅する海路の詳細な軌跡が記されており、地理的な背景を視覚的にわかりやすかったです。

■参加者が盛り上がったところ

「過酷すぎる航路」

「大黒屋光太夫とその仲間たちの10年に及ぶ漂流生活が描かれています」
「やっぱりそれぐらいかかるんですねー」
「しかも17人の仲間のうち帰国できたのはわずか2人という悲劇的な状況。にもかかわらず、漂流生活の中にも救いや希望の光が見える一方で、死体を海に捨てるシーンや、嵐のシーンなど、極限状況の中での凄惨な体験も生々しいです」
「この生々しさも膨大な量の資料整理や調査をした吉村昭さんだからこそですね」

■この本をより楽しめる情報

大黒屋光太夫をテーマにした作品はたくさんあります。漫画、大河ドラマ、舞台など、さまざまなメディアで取り上げられており、影響が広範に及んでいます。特に吉村昭のファンであれば、彼の描く大黒屋光太夫の物語は読む価値のある必読の作品です。歴史的な背景と人間ドラマが織り交ぜられ、光太夫の冒険と試練が吉村昭版で生き生きと描かれています。




【課題本一覧】
百年の孤独 / G・ガルシア=マルケス ←6月8日&7月27日 開催予定
重力の虹 / トマス・ピンチョン ←9月開催予定 
幻滅 / バルザック  ←11月開催予定
金閣寺 / 三島由紀夫 ←未定(参加希望者が2名以上になれば)
海と毒薬 / 遠藤周作        〃

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