4月30日(土)小説(ジャンルは自由)限定読書会開催 / RENS(大阪の箕面にある読書空間)
小説限定(ジャンルは自由)読書会 2024年4月30日(土)
4月の最後に開催された読書会は、小説に限定したものでした。
参加者はそれぞれの好きな小説を持ち寄り、ジャンルを問わずに多種多様な作品が紹介されました。
それでは早速、取り上げられた各作品についての紹介と、それに対する参加者たちの感想を紹介します。
内容にはネタバレも含んでいますので、ご注意下さい。
無名 / 沢木 耕太郎 (幻冬舎)
■父親との関係に思いを馳せたいあなたにおすすめの一冊
父が脳の出血により入院した。ゆっくりと、だが確実に衰えてゆくその横顔を私は飽かずに眺め続けた。父と過ごした最後の日々。自らの父の死を正面から描いた書き下ろし長編。沢木文学の到達点。
引用元:「幻冬舎」より
■興味深い質問
「無名というタイトルは?」
あらすじを聞いて、「無名」というタイトルにピンときました。
父という存在が家族や社会の中で、そして著者にとってどのような存在だったのか。日常生活の中で多くの父親が世間的には無名の存在としてその役割を果たしていること、その普遍的な存在感と、一方で個々における父親の重要性の対比が興味深かったです。
「それで、このタイトルですか」
■参加者が盛り上がったところ
「俳句」
父が晩年に趣味として始めた俳句が、この小説の中で際立っています。この物語を紹介してくれた方は、「父の俳句」のページを見せてくれました。その句をしばらく黙読し、俳句未経験ながらも、その言葉から感情が揺さぶられました。その句には切なさや悲しさが漂い、哀愁を帯びた何とも言い難い深みがありました。
■この本をより楽しめる情報
「深夜特急」で広く知られる著者ですが、この作品「無名」は、全く異なる個人的なテーマになっています。大切な人との別れに際して「あの時こうしていれば」「もっと語り合っていれば」という後悔は誰にでもあると思います。失われた時間と逸失したその機会に心を寄せる作品です。
■興味深い質問
「時代背景は?」
1900年代前半のパリ郊外を舞台にしたこの物語は、第一次世界大戦で左手を負傷した主人公が中心です。戦争の傷跡を抱えながら、傷痍軍人としての年金でぎりぎりの生計を立てています。彼の日常は、戦後の変化する社会の中での孤独と戦いながらも”ともだち”を見つけるようと奔走しますが……。
■参加者が盛り上がったところ
「ダメな人間」
「小説を読むとき、どんな興味を持ってその本を手にしますか?」
「特に『ダメ人間』が登場する小説に魅力を感じます。現実世界でそうした人物と接するのは大変かもしれませんが、小説の中では彼らの人生を追体験することができます」
この小説「ぼくのともだち」の主人公も典型的なダメ人間で、不器用さや誤解を招く行動が彼の挫折や失敗が織りなす”ともだち探し”。読み進めるうちに、主人公にハマっていきます。
■この本をより楽しめる情報
『ぼくのともだち』は現代にも通じる多くの普遍的な孤独に直面している主人公を描いています。友達がおらず、仕事も見つからない、さらには恋人もいません。これは現代人にとって共感できるテーマであり、読者自身の人生と重なる部分も多いでしょう。
モレルの発明 / アドルフォ ビオイ=カサーレス (水声社)
■幻想文学ファンにオススメの一冊
二つの太陽、二つの月が輝く絶海の孤島での「機械」、「他者性」、「愛」を巡る謎と冒険。
引用元:「版元ドットコム」より
■興味深い質問
「VR?」
「本作は1940年代に書かれたにもかかわらず、驚くべきことにバーチャルリアリティの概念が登場しています。その時代において、このような先進的なアイディアを取り入れたことは、革新的であったと思います」
著者がどのようにしてその時点で考えられる限りの未来を描出したのかも興味深い点です。
■参加者が盛り上がったところ
「『去年マリエンバートで』」
この小説『モレルの発明』が映画『去年マリエンバートで』の元ネタではないかという説があるそうです。
参加者の中には『モレルの発明』は知らないが、映画『去年マリエンバートで』を知っていました。『去年マリエンバードで』は約60年前に公開された革新的なモノクロ映画で、その独特さで話題を呼びました。
そしてこのカサーレスの『モレルの発明』が、この映画のプロットと独特の雰囲気のインスピレーションを与えたのだと。
■この本をより楽しめる情報
アドルフォ・ビオイ・カサーレスは、ボルヘスとの共著でその名を知られる幻想文学の作家です。彼の作品は、映画『去年マリエンバートで』に大きな影響を与えたといわれています。カサーレスの作品は、現実と幻想が錯綜する世界を紡ぎ出し、視覚的イメージと感覚的に訴えるものがあります。
【課題本一覧】
百年の孤独 / G・ガルシア=マルケス ←7月27日開催予定
重力の虹 / トマス・ピンチョン ←9月開催予定
鳳仙花 / 中上健次 ←未定(参加希望者が2名以上になれば)
幻滅 / バルザック 〃
金閣寺 / 三島由紀夫 〃
海と毒薬 / 遠藤周作 〃