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書いている人の読書会 2024年6月15日(土)

執筆・創作・ブログ・日記など、何かを書いている人限定の読書会を開催しました。
小説やエッセイ、ブログ、日記といったジャンルに関わらず、自分が好きな本や影響を受けた作品について、思いのままに話し合う場です。投稿をしていない方でも、何かを書いているだけで大歓迎ということで募集しました。

内容にはネタバレも含んでいますので、ご注意下さい。


モモ / ミヒャエル・エンデ (岩波少年文庫)

■大人になっても気づきのある物語を読みたいあなたにおすすめの一冊

時間どろぼうと,ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子モモのふしぎな物語.時間の真の意味を問う,エンデの名作.—ー

引用元:「岩波書店」より

■興味深い質問

「特別な小説ですか?」

「はい、そうなんです。この『モモ』という作品には、特別な思い入れがあります。何度か読み返していますが、特に大人になってから読むと、その深さが一層心に響きました。時間の大切さや生きる意味について考えさせられ、読むたびに新たな気づきを与えてくれる一冊です。

■参加者が盛り上がったところ

「時間の価値」

以前のRENS読書会でも紹介された『モモ』。その際にも、時間の重要性について話題にあがりました。
「大人になるにつれて、どうしても効率を重視し、時間を「無駄なく使う」ことに意識を向けがちです。しかし、それが本当に良いことなのでしょうか?」というような。
忙しさに追われる現代社会では、むしろその「効率」が何か大切なものを奪っているのではないか、と改めて考えさせられる場面がありました。

『モモ』が投げかける「時間とは何か」「どう生きるべきか」という問いは、年齢を重ねるごとに深みを増し、読むたびに新たな気づきがあります。

■この本をより楽しめる情報

『モモ』はドイツ児童文学賞を受賞した名作で、子ども向けの作品ながら、現代の忙しい大人にも深い感銘を与える一冊です。時間の大切さを問いかけるこの物語は、舞台演劇やミュージカルとしても楽しむことができます。


風に舞いあがるビニールシート / 森絵都 (文春文庫)

感情豊かな物語が好きな人におすすめの一冊

才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり…。自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編。あたたかくて力強い、第135回直木賞受賞作。

 引用:「BOOK」データベースより

興味深い質問

「どの短編がよかったですか?」

「『鐘の音』は、6つの短編の中で最も心に残る作品でした」
仏像修復師が抱える運命の不思議さと、魂のない仏像に向き合う孤独が描かれており、そのジレンマが印象に残っています。

■参加者が盛り上がったところ

「いい塩梅」

「森絵都さんの文体は、読者にとってとても心地よいんです。その魅力は、描写がしつこくなく、むしろシンプルでありながら、日常の一瞬一瞬に込められた価値や美しさを巧みに表現されています」

「著者の文体は、執筆を志す人にとって考になるはずです」
シンプルな表現の中にも感情やメッセージを伝える技術は、文章を書く上で身になります。余白を残しつつ感動を引き出す方法など、多くのヒントが隠されているのでしょう。

■この本をより楽しめる情報

本作は、6つの短編からなる小説集で、その中の一編が表題作となっています。また、この作品集は2006年上半期に第135回直木賞を受賞し、着実な評価を得ています。


若い小説家に宛てた手紙 / マリオ バルガス=リョサ (新潮社)

■時間や物語の構造、創作に興味があるあなたにオススメの一冊

小説は面白い。小説家はもっと面白い! が、創作とは多大な犠牲を強いるものであり、将来の保証は何もない。それでも作家になりたい若い人へ、小説への熱い思いを込めて宛てた小説家への手引。

引用元:「新潮社」より

興味深い質問

「どこの作家さんですか?」

「著者はペルー出身の小説家で、ノーベル文学賞を受賞したラテンアメリカ文学を代表する存在として知られています。また、ジャーナリストやエッセイストとしても高い評価を受けており、その多彩な才能があります」

この本には、小説に対しての独自の視点と洞察があり、小説家を目指す人にとって、実践的でありながらもインスピレーションに満ちた一冊です。

■参加者が盛り上がったところ

「小説の中の時間」

「バルガス=リョサいわく小説には、その物語の中で独自に流れる時間感覚が存在するそうです。この時間感覚は、実際の時間とは異なり、物語の展開に合わせて変化する、いわば客観的な時間です。読者が感じる時間の流れは、作家が意図的に操るものであり、これが物語の緊張感や感動を生み出す要素となっています」

創作において、この時間の行き来をどのように描くかは、小説家にとって重要な課題です。過去と現在、未来を自由に行き来させることで、キャラクターの成長や物語の深みを表現できる一方で、時間の操作が過剰であれば読者を混乱させるリスクもあります。

■この本をより楽しめる情報

「小説は面白い。小説家はもっと面白い! 作家を志す人へ、実作者からの熱い思い!」
創作を志すすべての人にとって必読の内容です。執筆するうえで直面する葛藤や喜び、そして乗り越えるべき壁について、真摯に語られているので、若い作家だけでなく、創作に携わるすべての人にとって、インスピレーションと勇気を与える一冊となるはずです。


今回の読書会は、「書いている人」限定というテーマで開催されました。
紹介された本の内容だけでなく、執筆にまつわる具体的な話題が次々と飛び交い、盛り上がりました。参加者たちは、自分が執筆する際の速度やペース、影響を受けた本について語り合い、どのような描写を心がけているのか、どの時間帯に執筆しているのか、そしてその時間帯が自身の創作にどう影響を与えるのか、といった話が尽きませんでした。

【課題本一覧】
重力の虹 / トマス・ピンチョン ←9月開催予定
幻滅 / バルザック    ←11月頃??
鳳仙花 / 中上健次 ←未定(参加希望者が2名以上になれば)
箱男 / 安部公房        〃
金閣寺 / 三島由紀夫        〃
海と毒薬 / 遠藤周作        〃

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