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読書会 2023年12月9日

2023年も残りわずか1ヶ月を切りました。12月にはいり開催された読書会です。
この読書会は、ジャンルが自由ということで作風の異なる小説が紹介されました。

内容には一部ネタバレを含みます。


地雷グリコ / 青崎 有吾 (KADOKAWA)

遊び心のある頭脳戦を読みたいあなたにおすすめの1冊

ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説!
射守矢真兎(いもりや・まと)。女子高生。勝負事に、やたらと強い。
平穏を望む彼女が日常の中で巻き込まれる、風変わりなゲームの数々。罠の位置を読み合いながら階段を上ったり(「地雷グリコ」)、百人一首の絵札を用いた神経衰弱に挑んだり(「坊主衰弱」)。次々と強者を打ち破る真兎の、勝負の先に待ち受けるものとは――ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説、全5篇。

引用元:「KADOKAWA」より

■興味深い質問

「ほかのタイトルは?」

この短編集には、表題作『地雷グリコ』のユニークさに匹敵するタイトルがあります。ほかにも『自由律ジャンケン』『坊主衰弱』……。ありきたりではなく独創的で、そのストーリー設定がどのようなものなのか、非常に興味深いです。

■参加者の関心

チョコレートとパイナップルって同じ字数なんですね」

この短編集に収録された五つうち、『地雷グリコ』と『自由律ジャンケン』のルールを説明してもらいました。誰もが知ってるジャンケンに新しいひねりを加えられた要素があり、戦略が勝負の鍵を握るのか。数学的な思考や巧妙なルール、繰り広げられる頭脳戦、想像力が刺激されます。ただのゲームを超えて危険性や予測不能展開が待ち受けているのか、話を聞いているだけで興味をそそります。

それにしても、グリコ懐かしいです。小学生の頃を思い出しました。

■この本をより楽しめる情報

紹介された方のオススメはルール説明があった『地雷グリコ』と『自由律ジャンケン』です。
おなじみの単純なゲームに特殊な条件を加えることで、よりスリリングな駆け引きが生まれます。読者は童心にかえりながら知的な遊び心と挑戦を味わうことができます。またこの本の表紙デザインも前衛的で、その革新的な内容と見事にマッチしています。


アルジャーノンに花束を / ダニエル・キイス (ハヤカワ文庫NV)

自己探求の人間ドラマを読みたいあなたにおすすめの1冊

世代を超えて読み継がれてきた感動作

32歳になっても幼児なみの知能しかないチャーリイ・ゴードン。そんな彼に夢のような話が舞いこんだ。大学の先生が頭をよくしてくれるというのだ。これにとびついた彼は、白ネズミのアルジャーノンを競争相手に検査を受ける。やがて手術によりチャーリイの知能は向上していく…天才に変貌した青年が愛や憎しみ、喜びや孤独を通して知る人の心の真実とは? 全世界が涙した不朽の名作。──

 引用:「Hayakawa Online」より

興味深い質問

「知性は人を幸せにするのか?」

この物語ではIQと個人の幸福や価値の関係をテーマにしています。主人公は突然天才となった知的障害者で、その悲哀、社会状況、科学、恋愛、友情が物語に織り込まれています。
読書会では、紹介された方から「知性が人を幸せにするか?」という問いが投げかけられました。
簡単には答えが見つからない難題、また「自分の人生の問題が見える」とも漏らしていました。

■参加者が盛り上がったところ

「映画にもなりましたよね」

この小説はかなり有名です。というのも1968年に『まごころを君に』として映画化されて以来、何度も映画化されています。
また、テレビドラマ、ラジオドラマ、舞台劇など、様々なメディアで取り上げられており、その人気と普遍性を示しています。

日本においては、特にユースケ・サンタマリアと山下智久(山P)が主演したテレビドラマ版は小説を読んだことがない人でも、ドラマの存在はよく知られていました。さまざまな形で繰り返し取り上げられ、時代を超えて多くの人々に愛され続けています。

■この本をより楽しめる情報

もともと中編のSF小説として書かれ、ヒューゴー賞短編小説部門を受賞したこの作品は、後に長編小説として再構築さました。そしてネビュラ賞を受賞。
またこの小説の大きな魅力として、日記形式で書かれた文章にあります。
この独特の表現方法は、物語の進行に深みを与え、主人公の内面を身近に感じさせます。


死の泉 / 皆川 博子 (早川書房)

■歴史の影、偏愛の物語を読みたいあなたにおすすめの1冊

第二次大戦下のドイツ。私生児をみごもりナチの施設「レーベンスボルン」の産院に身をおくマルガレーテは、不老不死を研究し芸術を偏愛する医師クラウスの求婚を承諾した。が、激化する戦火のなか、次第に狂気をおびていくクラウスの言動に怯えながら、やがて、この世の地獄を見ることに…。双頭の去勢歌手、古城に眠る名画、人体実験など、さまざまな題材と騙りとを孕んだ、絢爛たる物語文学の極み。

引用元:「版元ドットコム」より

興味深い質問

「カストラートってなんですか?」

「カストラート」とはイタリア語です。思春期前の男児を去勢し、男性ホルモンの分泌を抑制することで、声帯の成長を妨げ、ボーイ・ソプラノの声質を維持します。この処置により、カストラートは成人男性と同様の身長や胸郭の成長を遂げながら、特有の声のトーンや持続力を持つとされ、その声は美しく官能的であると評されています。

「カストラート」という言葉に初めて知りました、その意味についても驚愕でした。

■参加者が盛り上がったところ

「クラウスの独壇場」

この『死の泉』という作品において、登場人物である医師クラウスのキャラクターが強烈です。
その理由のひとつとして、異常なほどに声変わり前のボーイ・ソプラノを偏愛している点にあります。この特異な偏愛は、一般的な音楽愛好家のそれとは異なり、彼の心理や性格に深く関わる重要な要素となっています。
こんな特殊な趣味を持つキャラクターに出会うことは珍しく、読書会でもクラウスの話題が尽きませんでした。

それにしても「なぜそんなにその声を好むの……?」

■この本をより楽しめる情報

1998年に第32回吉川英治文学賞を受賞したこの作品は、その優れた文学的価値が高く評価された傑作です。
現在は絶版となっており、新品での購入は不可能ですが、古本屋などで探すことで手に入れることができます。


ディディの傘 / ファン・ジョンウン (亜紀書房)

■韓国文化と革命的な瞬間に興味のあるあなたにおすすめの1冊

死と破壊、そして革命。
人々は今日をどのように記憶するのか。
「セウォル号沈没事故」「キャンドル革命」という韓国で起きた社会的激変を背景に、人が人として生きることの意味を問う最新作。
多くの人命を奪った「セウォル号沈没事故」、現職大統領を罷免に追い込んだ「キャンドル革命」という社会的激変を背景にした連作小説。
孤立し、閉塞感が強まる日常の中で、人はいかに連帯し、突破していくのか?
行く先に真の〈革命〉はもたらされるのか?
私たちが望む未来とは?
――人は誰もが唯一無二の存在という事実をあらためて突きつけていく。

引用元:「版元ドットコム」より

興味深い質問

「セウォル号の事件覚えていました?」

「セウォル号の沈没事件、覚えていますか?」
私は「なんとなく覚えている」という程度でしたが、実際にはかなりの注目を集めた重大な事件でした。
当時テレビで頻繁に報道されていたため、その悲惨な出来事を覚えている参加者がいました。

「数百人の学生を乗せた船が沈没した事件で、韓国政府の対応の遅れが大きな批判の対象となりましたね」その詳細をよく覚えていることに、自分でも少し驚きました。
この事件は、多くの人々に影響を与え、特に安全対策と危機管理に関する重要性を浮き彫りにしました。救助活動の遅れや政府の対応の不手際は、後に多くの議論を呼びました。

■参加者が盛り上がったところ

「韓国の文化」

「韓国は、地理的には日本の近隣に位置しているものの、文化や歴史の不思議な距離感が感じられます」
年代や個人の経験によっても、この国に対する感覚は大きく異なります。近年では韓国風メイクやK-POPなどの韓国文化が日本で広く受け入れられ、両国間の文化的な交流はますます活発になっています。
しかし、一方で読書会に参加された方の中には、韓国の小説を読んだ経験が少ないという声がありました。

■この本をより楽しめる情報

『ディディの傘』は5・18文学賞と第34回萬海文学賞を受賞。またこの小説が韓国の有名な出版社である創批(チャンビ)で連載されていたこともあり、その人気と影響力は非常に大きいです。


【まとめ】

今回の読書会も異なるテーマや文体、参加者に新たな視点や興味をもたらす会となりました。
次回で2023年の読書会も最後です。
継続して課題本読書会も募集しておりますので、リクエストがあればご連絡ください。

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