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2023年2月11日の『本屋大賞』(ノミネート作品を含む)読書会で紹介された小説はこちらです。

『紙の動物園』 著:ケン・リュウ

現代中国SFを代表するおすすめの1冊です。

近年の中国SF小説は、世界的にも注目を集めているジャンルの1つです。文化的な背景や、歴史的な文脈を表した独自の特徴があります。特に興味深いのは、技術的進歩とそれが社会に変化をもたらしている点です。

現代の中国SFの中でも最も有名な小説に、劉 慈欣の『三体』シリーズがあります。こちらも2020年の『本屋大賞』翻訳部門で3位になっています。

それより遡り、2016年『本屋大賞』の翻訳小説部門にノミネートされ2位となったのがこの『紙の動物園』です。
ほかにもヒューゴー賞、ネビュラ賞といった海外のSF賞をいくつか受賞しています。

「本棚にも置いてありました」

RENSの本棚にも置いています。
短編集ですぐに読めて面白い本として目立つ棚に配置しました。
来店されたお客さんも手軽に読んでその質の高さに驚かされているようです。

私も『紙の動物園』は好きな短編集なので、感想やどんなところに着目したのか気になるところでした。

【あらすじ】

香港で母さんと出会った父さんは母さんをアメリカに連れ帰った。泣き虫だったぼくに母さんが包装紙で作ってくれた折り紙の虎や水牛は、みな命を吹きこまれて生き生きと動きだした。魔法のような母さんの折り紙だけがずっとぼくの友達だった……。ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞という史上初の3冠に輝いた表題作など、第一短篇集である単行本版『紙の動物園』から7篇を収録した胸を打ち心を揺さぶる短篇集

(引用元:版元ドットコム)より

「この短編集面白いですよね?」
「……。」

紹介された方は気兼ねなく「面白かった」とは言えなかったようです。
それは『紙の動物園』という短編集全体に流れる深刻なテーマが関係していました。

急速な技術の発展の一方で、中国では経済格差が問題視されています。この短編集にはそういった時代の大きな潮流に振り回されながらも強く生きていく姿が描かれています。

紹介された方は、その部分において真摯に正面から向き合ったように感じました。階層的な社会構造から光と闇のコントラストがくっきりと浮かび上がったような物語。

倫理的な問題や経験に基づく問題は複雑です。
面白いか否か、という単純な質問に言葉をつまらせる気持ちが伝わってきました。



「中国パワーを感じました」

『紙の動物園』に登場する人物たちは、生きていくうえで「しなければならない」という強い意志を持っています。人それぞれの正義があり、ときにその正義と正義が激しくぶつかりあいます。

長い歴史と文化があり、その背景からも中国人が持っている強さやパワーには参加者全員が思い当たるふしもあり、共感を呼びました。

SFにとどまらず、さまざまなジャンルで今後も世界がびっくりするような小説が中国から飛び出してくるのであろうと予期される話でした。

その他に紹介された本はこちら

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