「SF・ミステリー・ホラー小説読書会」で紹介された小説『黒い家』 / 貴志 祐介(2023年3月21日)
文句なく怖い、恐ろしいホラーを読みたいあなたにおすすめの1冊
怖いホラー小説を誰かに教えるとすれば? ホラー小説のおすすめランキングでもよく目にする『黒い家』。今回はRENSの読書会にもやってきました。
ホラー小説には、様々な恐ろしい要素があります。例えば、ベタに幽霊や怪談、呪いや、スプラッターもの、ゾンビ系、クトゥルフ神話のような体系化された壮大な世界、そしてそれらの中でも一番怖いものは結局「人間」といった声もあがります。
この『黒い家』はその代表作といえるでしょうか。
「映画化もされています」
『黒い家』は映画化もされていて、女優大竹しのぶさんの演技がとにかく凄まじいそうです。
大竹しのぶさんの表情や仕草、言葉遣い、鬼気迫る演技すべてがとても印象的だそうです。女優としての知名度はもちろんのこと演技力も折り紙付きの大竹しのぶさん。物語の中でどのような演技をしているのか、興味がある方はぜひともご覧ください。
紹介された方は映画を見てから原作である小説を読んだそうです。
映像化されると小説とはまた違ったヴィジュアル面や演出の怖さが気になるところです。不気味な音楽や効果音、特殊な演出がよりホラーな世界観を表現しているのでしょう。
【あらすじ】
顧客の家に呼ばれ、子供の首吊り死体の発見者になってしまった保険会社社員・若槻は、顧客の不審な態度から独自の調査を始める。それが悪夢の始まりだった。第4回日本ホラー小説大賞受賞。
(引用元:版元ドットコム)より
「怖そうなので読むことはないと思います。ネタバレしてもかまいません」
さすが名作ともあって、参加者全員が未読既読にかかわらず『黒い家』を知っていました。
未読の参加者が読まなかった理由は「怖すぎる」でした。厳密にいうと「かなり怖そう」です。
普段からホラー小説を読まない読者からすると、怖すぎる小説は心理的な負荷が大きいのかもしれません。特に、恐怖や不安などの負の感情を揺さぶり続けるホラー小説。しかも長時間の読書体験です。読者がストレスを感じても不思議ではありません。
仮に今後『黒い家』を読むことになったとしても、怖いシーンが予めわかっていることである程度の展開の予想が付き、読みやすくなるはずです。
ということで、今回は参加者全員が同意のもと完全ネタバレで話をしていただきました。
紹介された方の熱のこもった語りで、聞き入りました。
主人公若槻のスーパーマンっぷり
一通り話し終えて、参加者は様々な感情が入り混じった様子でした。各エピソードについての感想がありましたが、中でも主人公の話題になりました。
主人公の若槻は、次々に明かされる真相や惨劇に動揺し、怯えながらも立ち向かっていきます。生き残るための本能や、正義感や責任感だけでは解せない行動です。
自分自身や恋人を守るための行動? 恐怖に立ち向かう姿が超人のそれです。物語が進むにつれて、若槻は自身を超越した力を発揮します。しかし、この話は主人公の成長物語ではありません。
序盤は時間をかけて徐々に恐怖心を煽るような繊細な描写が続きます。しかし、後半になるとスピード感があって前半とは対照的に粗さが目立ち、行動や決断の不審さなどがあります。それでもその疾走感と怒涛の展開に引き込まれます。
今後も残るホラー小説の名作
結局一番怖い存在が”人間”のホラー小説。
自分たちが身近に存在するために共感しやすく、恐怖心がふつふつと湧き上がります。
この小説が出版されてから25年ほど経ちますが未だに色褪せず、恐怖色濃く語り継がれていくのであろうと再認識しました。