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2023年2月11日の『本屋大賞』(ノミネート作品を含む)読書会で紹介された小説はこちらです。

『べルリンは晴れているか』 著:深緑 野分

歴史小説でありながらミステリ要素もある贅沢な1冊です。

タイトルから日本の話ではないのかと察しました。

著者は深緑 野分さんです。名前の読み方がわかりません。
”ふかみどりのわき”と読むらしいです。他の参加者も知っていて、本屋で探すときに”し”の欄にはなくて見つけられなかったと言っていました。

『戦場のコックたち』が代表作で、直木賞の候補にもなったことがある実力派の作家さんです。

日本の作家が描いた海外の物語

舞台は第二次世界大戦敗戦後1945年7月のドイツ、ベルリン。著者は日本人でありながら膨大な資料や参考文献を読み込んで書き上げられたことが想像できます。

実はこのとき私が紹介しようとしていた『本屋大賞』の小説も、第二次世界大戦中の独ソ戦争を舞台にした『同志少女よ、敵を撃て』でした。

『ベルリンは晴れているか』と時代背景も近く、好奇心をそそられながら聞きました。

【あらすじ】

1945年7月、ナチス・ドイツの敗戦で米ソ英仏の4カ国統治下におかれたベルリン。ドイツ人少女アウグステの恩人にあたる男が米国製の歯磨き粉に含まれた毒による不審死を遂げる。米国の兵員食堂で働くアウグステは疑いの目を向けられつつ、なぜか陽気な泥棒を道連れに彼の甥に訃報を伝えに旅出つ――。

(引用元:版元ドットコム)より

「皆さんには明確に”敵”として認識している対象がいますか?」

これは作中に登場する第二次世界大戦後のドイツ人とロシア人の関係性についてのことでした。
戦時中には有無も言わさずに”明確な敵”としてきた双方が戦後も継続した敵対感情を抱いているのは当然のことです。

安直に答えることができない問い。

現代の私たちにとってそのような”明確な敵”という存在が見当たりません。
今まで出会ってきた人たち、学校や職場で平等かつ公正に接するなんて出来るわけがありません。しかし異なる意見や価値観での対立があったとしても”明確な敵”にはなりえませんでした。

多様な背景や経験によって個人は異なりますが、対話やコミュニケーションを通じてそれを極力理解をしようとしてきたはずです。


「対立していた人たちが仲良くなるシーンにグッときます」

紹介された方が一番印象に残ったのは、ロシア人とドイツ人がお酒を飲んで交流するシーンでした。

初めは緊張感のある関係だった二人がお酒を飲んでいくうちに、徐々に打ち解けていきます。
長年の溜め込んだ感情を解放することで、どこか心を通わせたような感覚になるのでしょうか。

二人が敵同士であった過去は忘れ去られませんが、とても気持ちの良いシーンです。

「第二次世界大戦中の知識は必要ですか?」
「いりません」

読書会では戦後の市民たちの生活が話題となりましたが、本筋にはエンターテイメント性あふれるミステリーにもなっていて、特別な知識がなくても十分に楽しめるようです。

とはいえ『ベルリンは晴れているか』は、戦争の話があり少し重たい空気にはなりました。
参加者それぞれが無言の内に秘めた感情の揺らめきのようなものを垣間見えました。

その他に紹介された本はこちら

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