『本屋大賞』読書家で紹介された『硝子の塔の殺人』 / 知念 実希人(2023年2月11日)
ミステリーうんちく好きなあなたにおすすめする1冊です。
読んでいる本を途中でやめるとき、その判断はいつどんなときにするのでしょうか。
読む前に持っていた興味がなにかのキッカケで損なわれていく。文章が読みにくかったり、登場人物に感情移入できなかったり、あるいは期待していたストーリー展開にならなかったとき……。
自分の楽しめる読書スタイルがあって、それに合わないときページをめくる手がとまり、本が閉じられる。その判断は人それぞれです。
「実は、5ページ目ぐらいで読むのをやめようと思ったんです」
紹介された方は「たくさんの本を読みたい」ので、自分に合わない本は早い段階であっさりと読むことをやめるそうです。
『硝子の塔の殺人』も普段なら読まない部類だったようですが、今回の『本屋大賞』読書会で話をしようと思っていたので最後まで読み、紹介をしてくれました。
そして読了後は面白かったという感想になったようです。
【あらすじ】
雪深き森で、燦然と輝く、硝子の塔。
(引用元:版元ドットコム)より
地上11階、地下1階、唯一無二の美しく巨大な尖塔だ。
ミステリを愛する大富豪の呼びかけで、刑事、霊能力者、
小説家、料理人など、一癖も二癖もあるゲストたちが招かれた。
この館で次々と惨劇が起こる。
館の主人が毒殺され、ダイニングでは火事が起き血塗れの遺体が。さらに、血文字で記された十三年前の事件……。謎を追うのは名探偵・碧月夜と医師・一条遊馬。散りばめられた伏線、読者への挑戦状、圧倒的リーダビリティ、そして、驚愕のラスト。
「あっ、という間にできあがり」
あらすじにもある通り、硝子の塔に集められた魅力的なキャラクターたちがたくさん登場します。
物語の流れやプロットがしっかりと設計されているようです。閉ざされた空間、限られた状況下で事件が発生するまで電光石火です。
巨大な尖塔で繰り広げられる事件、個人的な問題や秘密を抱えてそうなゲストたち。これらの情報を元にどうやって真相にたどり着くのか、聞いているだけで極上のエンターテイメント性を感じました。
「ミステリーうんちくや持論の展開が何度も繰り返されるんです」
登場人物の中にミステリーマニアがいて、ミステリー作家やトリックについて頻繁に語られる場面があります。
紹介された方は「もうわかったから!」となったそうです。
度重なる探偵役の本筋からそれたミステリー論、その脱線をイチイチ注意する助手役。
「吉本新喜劇のようなお約束のボケとツッコミみたいなやりとりですか?」
「……。」
「アガサ・クリスティー」や「有栖川有栖」といったミステリー作家や、有名なミステリー小説にトリックの披露には相当なミステリー知識とミステリー愛がなければついていけないのかもしれません。
「でもこのページ数ぐらいから面白くなるんです」
「ネタバレはちょっと」
他の参加者も『硝子の塔の殺人』に興味を持っていて、読んでみたいと言っていました。
紹介された方は、良い意味で裏切られ、驚きや感動を味わうことができたようで満足そうに見えました。