歴代『本屋大賞』 (ノミネート作品含む)読書会 / (2023年2月11日)
2023年2月11日の読書会
今回の読書会は、本好きなら誰もが知っている『本屋大賞』に限定して開催しました。
作家の選考委員が評価する文芸賞と違って、こちらは全国の書店員さんが投票した作品たちです。
より読者に近い位置から選ばれた数々の作品は面白いこと間違いなしです。
読書会に持ち込まれた小説も見覚えのあるものがちらほらと。
その中から紹介してくださった本たちはこちらです。
汝、星のごとく / 凪良 ゆう
■限定された環境に違和感を覚えるあなたにおすすめの一冊
その愛は、あまりにも切ない。
正しさに縛られ、愛に呪われ、それでもわたしたちは生きていく。
ーーわたしは愛する男のために人生を誤りたい。
風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。
ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。――ーーまともな人間なんてものは幻想だ。俺たちは自らを生きるしかない。
引用:版元ドットコム より
■興味深い質問
「マイノリティにスポットをあてた作品ですか?」
「そうですね、なんというか『大枠に入れなかった人たち』みたいなイメージです」
■参加者が盛り上がったところ
「親ガチャ失敗」
瀬戸内海の島。限定された地域で永遠に続いていく人間関係。そんな中での「親ガチャ失敗」がどれほど登場人物を縛る枷になっているのか、身につまされる思いです。
「親ガチャ失敗」という現代的でキャッチ―なワードとは裏腹に深刻さも感じました。
■この本をより楽しめる情報
2023年の『本屋大賞』にノミネートされています。
ほか、『第168回直木賞候補作』『第44回吉川英治文学新人賞候補作』『2022王様のブランチBOOK大賞』数々の受賞・ノミネート・ランクイン!
ちなみに2020年には『流浪の月』で本屋大賞を受賞しています。
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硝子の塔の殺人 / 知念 実希人
■ミステリーうんちく好きなあなたにおすすめの1冊
雪深き森で、燦然と輝く、硝子の塔。
引用元:版元ドットコム
地上11階、地下1階、唯一無二の美しく巨大な尖塔だ。
ミステリを愛する大富豪の呼びかけで、刑事、霊能力者、
小説家、料理人など、一癖も二癖もあるゲストたちが招かれた。
この館で次々と惨劇が起こる。
館の主人が毒殺され、ダイニングでは火事が起き血塗れの遺体が。さらに、血文字で記された十三年前の事件……。謎を追うのは名探偵・碧月夜と医師・一条遊馬。散りばめられた伏線、読者への挑戦状、圧倒的リーダビリティ、そして、驚愕のラスト。
■興味深い質問
「本当に5ページ目で読むのをやめようとしたのですか?」
紹介された方の好みの冒頭ではなかったようでした。
が、この読書会があったのでとりあえず読み進め……「最後まで読むと面白かった」
■参加者が盛り上がったところ
「ミステリー作家や小説のうんちくが何度も繰り返されるんです」
作中にはそういったシーンが何度かあって「もうわかったから!」と辟易したそうです。
ミステリーの知識が好きな人にはたまらない内容なのかもしれません。
■この本をより楽しめる情報
ミステリー作家の大御所である島田荘司氏や綾辻行人氏が絶賛する新本格ミステリー小説。
2022年の『本屋大賞』にノミネートされ8位となった作品。
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ベルリンは晴れているか / 深緑 野分
■歴史&ミステリ小説を読みたいあなたへおすすめの1冊
1945年7月、ナチス・ドイツの敗戦で米ソ英仏の4カ国統治下におかれたベルリン。ドイツ人少女アウグステの恩人にあたる男が米国製の歯磨き粉に含まれた毒による不審死を遂げる。米国の兵員食堂で働くアウグステは疑いの目を向けられつつ、なぜか陽気な泥棒を道連れに彼の甥に訃報を伝えに旅出つ――。
引用元:版元ドットコム
■興味深い質問
「皆さんには明確な”敵”がいますか?」
日常生活において”明確な敵”として認識している対象がいるのか、いないのか、断言することができませんでした。
(第二次世界大戦後のドイツ人とロシア人の関係性について)
■参加者が盛り上がったところ
「知識がなくても楽しめる」
戦後の生活が描かれていて、一般市民も多く登場するので戦争やその背景についての知識がなくても十分に楽しめるようです。
■この本をより楽しめる情報
2019年の『本屋大賞』にノミネートされ3位になった作品。
ほかにも『直木賞』候補や『このミス』、『Twitter文学賞』と様々な賞を受賞。
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紙の動物園 / ケン・リュウ
■現代中国SFを代表するおすすめの1冊
第一短篇集である単行本『紙の動物園』から、母と息子の絆を描いて史上初のSF賞3冠に輝いた表題作など、7篇を収録した短篇集
引用元:版元ドットコム
■興味深い質問
「この短編集面白いですよね?」
「……。」
紹介された方は手放しで面白いかったとは言えなかったようです。それはこの短編集全体に共通する深刻なテーマが関係していました。
■参加者が盛り上がったところ
「先進✖後進、中国人のパワー」
時代が生む階層化された格差が描かれています。もともと中国人が持っている強さやパワーには参加者全員が思い当たるふしもあり共感を呼びました。
■この本をより楽しめる情報
ヒューゴー賞、ネビュラ賞といった海外のSF賞をいくつか受賞しています。
2016年『本屋大賞』の翻訳小説部門にノミネートされ2位となっています。
■この記事の詳細はこちら
同志少女よ、敵を撃て / 逢坂 冬馬
■戦争小説を読まないあるなたにこそおすすめの1冊
1942年、独ソ戦のさなか、モスクワ近郊の村に住む狩りの名手セラフィマの暮らしは、ドイツ軍の襲撃により突如奪われる。母を殺され、復讐を誓った彼女は、女性狙撃小隊の一員となりスターリングラードの前線へ──。第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作。
引用元:版元ドットコム より
■興味深い質問
「外国小説は登場人物が覚えられないのですけど、どうでした?」
「大丈夫です。作者はそのあたりにも十分配慮をしているようで、登場人物の名前には特徴も添えられているので覚えやすいです」
■参加者が盛り上がったところ
「戦争小説の女性読者は少ない?」
『同志少女よ、敵を撃て』は戦争小説ですが、比較的に女性からも読まれているそうです。読み物としての完成度の高さに加えてジェンダーやフェミニズムの問題にも切り込んでいるので女性にも高い関心があるのではないでしょうか。
■この本をより楽しめる情報
選考委員全員が満点をつけて『アガサ・クリスティー賞』の大賞となったデビュー作。
2022年の『本屋大賞』では1位になっています。
今後も期待の超新星です。
正欲 / 朝井 リョウ
■多様性を考えるあなたにおすすめの1冊
あってはならない感情なんて、この世にない。それはつまり、いてはいけない人間なんて、この世にいないということだ――共感を呼ぶ傑作か? 目を背けたくなる問題作か? 絶望から始まる痛快。あなたの想像力の外側を行く、作家生活10周年記念、気迫の書下ろし長篇小説。
引用元:新潮社 より
■興味深い質問
「少年革命家Youtuber知りませんか?」
「誰ですか? 少年? おじさん?」
この小説には不登校の小学生Youtuberが登場するようです。そのモデルとなった? と推測される”少年革命家Youtuber”を知らない参加者と知っている参加者で話題になりました。
■参加者が盛り上がったところ
『桐島、部活やめるってよ』
本筋の『正欲』とはそれました。朝井リョウさんの作品はとても人気があり、参加者のほとんどが1作以上既読。中でも『桐島、部活やめるってよ』の内容について思い出に浸りながら盛り上がりました。
■この本をより楽しめる情報
第34回『柴田錬三郎賞』の受賞作。2022年の『本屋大賞』にもノミネートされて第4位になっています。
https://www.shinchosha.co.jp/seiyoku/
【まとめ】
今回は初めての試みとして『本屋大賞』受賞作(ノミネート作品含む)に限定しました。さすがにレベルの高い小説ばかりでどれも読んでみたくなるようなラインナップでした。それに知名度もあるので参加者同士でも読んだことがあったり、知っている作家さんだったりと興味津々でした。
今後も文芸賞の受賞作や候補作に限定した読書会を開催する予定です。3月4日(土)には『芥川賞』『直木賞』の読書会を開催予定です。