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歴史・時代小説限定の読書会 2024年6月22日(土)

今回の読書会は、初の試みとなる「歴史・時代小説」です。歴史の舞台裏を感じさせる実際の史実に基づいた物語や、時代背景を忠実に再現したフィクションなど、さまざまな作品を取り上げます。
歴史好きの方や、時代小説に興味がある方、これから読もうと考えている方におすすめの読書会でした。
ということで、紹介された小説はこちらです。

内容にはネタバレも含んでいますので、ご注意下さい。


破軍の星 / 北方 謙三 (集英社文庫)

■鎌倉・南北朝時代に興味がある人におすすめの一冊

建武の新政で後醍醐天皇により十六歳の若さで陸奥守に任じられた北畠顕家は奥州に下向、政治機構を整え、住民を掌握し、見事な成果をあげた。また、足利尊氏の反逆に際し、東海道を進撃、尊氏を敗走させる。しかし、勢力を回復した足利方の豪族に叛かれ苦境に立ち、さらに吉野へ逃れた後醍醐帝の命で、尊氏討伐の軍を再び起こすが……。一瞬の閃光のように輝いた若き貴公子の短い、力強い生涯。

引用元:「集英社」より

■興味深い質問

「北畠顕家のどの時期が描かれていますか?」

『破軍の星』では、北畠顕家の16歳から21歳までの若き時代が描かれています。わずか21年という短い生涯にもかかわらず、彼の生きざまはまさに「太く短く」輝いています。その瞬間瞬間に燃え上がる彼の情熱と壮絶な戦いが、鮮やかに描き出されています。短命ながらも歴史に名を残した北畠顕家の人生のきらめきに惹かれます。

■参加者が盛り上がったところ

「鎌倉~南北朝時代の小説」

「鎌倉幕府が滅びた後も南北朝に分かれて長期にわたる戦乱が続いていました。そのためなのか、歴史小説としても描かれることが少ない一方で、歴史的な転換期としてドラマチックな時代でもありますよ」

■この本をより楽しめる情報

歴史好きにはたまらない、あまり題材にされていない鎌倉〜南北朝時代を描いた作品。ハードボイルド作家ならではの視点で、戦国の英雄・北畠顕家の生涯がダイナミックに描かれています。歴史小説ファン必見です。第4回柴田錬三郎賞の受賞作。


幸村を討て / 今村 翔吾 (中央公論新社)

策略や戦略そして、真田幸村に興味があるあなたにおすすめの一冊

亡き昌幸とその次男幸村――何年にもわたる真田父子の企みを読めず、翻弄される諸将。徳川家康、織田有楽斎、南条元忠、後藤又兵衛、伊達政宗、毛利勝永、ついには昌幸の長男信之までもが、口々に叫んだ。「幸村を討て!」と……。戦国最後の戦い「大坂の陣」を通じて描く、親子、兄弟、そして「家」をめぐる、切なくも手に汗握る物語。

 引用:「中央公論社」より

興味深い質問

「真田幸村? 信繁?」 

「信繁(のぶしげ)が正式な名前だと思います。時代の記録や史料を調べても、『幸村』という名がそれほど残っていないとかなんとか。この小説でも、彼の名前は『真田信繁』として登場しますよ」

■参加者が盛り上がったところ

「主人公によって見方が変わる戦国時代」

「さまざまな武将の視点から描かれていて、そこが面白かったです。それこそ徳川家康の視点があったり、関ヶ原の戦いでの目撃者である武将たちから情報を集めていくという展開が新鮮でした。それぞれの武将が抱える思惑や策略が絡み合い、その中で真田幸村がどのように行動するのか、スリリングな展開が続き、読み応えたっぷりでした」

■この本をより楽しめる情報

今、勢いのある歴史作家として注目されている著者が手がけた、直木賞受賞後の第一作。タイトル『幸村を討て』からして、興味を引きつけられます。戦国時代という最も人気のある歴史的背景を舞台に、真田幸村という魅力的な武将を中心に据えています。


アウシュヴィッツのタトゥー係 / ヘザー・モリス (双葉文庫)

■ホロコースト、極限状態の中で生き抜いた史実に興味があるあなたにオススメの一冊

第二次世界大戦下のアウシュヴィッツで、生き延びるため同胞に鑑識番号を刺青し名前を奪う役目を引き受けたユダヤ人の男が、ある日、その列に並んでいた女性に恋をした――
「必ず生きて、この地獄を出よう」と心を決め、あまりに残酷な状況下で自らもあらゆる非人間性に直面しながら、その中でささやかな人間らしさと尊厳を守り抜くために重ねた苦闘と愛と信念の物語。ーー

引用元:「双葉社」より

興味深い質問

「生存率はどれぐらいなのでしょう?」

当時のアウシュヴィッツ収容所における生存率は、極めて低かったとされています。あまりにも過酷な状況の中、人は「煙になって抜け出すしかない」とまで言われるほどでした。実際、収容された人々の多くが命を落とし、生還できたのはほんのわずか。収容所の過酷な実態を知ると、その絶望的な確率に胸が痛みます。

■参加者が盛り上がったところ

「極限状態の中での愛」

この物語は、実際の史実に基づいており、アウシュヴィッツ収容所でタトゥー係という特殊な役割を担った主人公が、ある女性との恋愛を描いています。収容所という、信じがたいほど過酷で凄惨な環境の中で、果たしてどのようにして愛を育んだのか――。
絶望的な状況下での希望や人間の愛情、歴史的悲劇と個人の物語が交錯しています。

■この本をより楽しめる情報

ホロコースト時代の実話をもとにした小説『アウシュヴィッツのタトゥー係』は、テレビドラマ化もされています。ホロコーストを題材にした作品の中には、フィクションで明らかに作り話とわかるものも少なくありませんが、この小説は完全に実際の出来事に基づいています。イギリスで130万部、全世界で300万部を突破したベストセラーとなり、邦訳が出版されました。


はなとゆめ / 冲方 丁 (角川文庫)

■宮廷文化や雅な会話に魅了されるあなたにオススメの一冊

なぜ彼女は、『枕草子』を書いたのか――。28歳の清少納言は、帝の妃である17歳の中宮定子様に仕え始めた。華やかな宮中の雰囲気になじめずにいたが、定子様に導かれ、その才能を開花させていく。機転をもって知識を披露し、清少納言はやがて、宮中での存在感を強める。しかし幸福なときは長くは続かず、権力を掌握せんとする藤原道長と定子様の政争に巻き込まれて……。清少納言の心ふるわす生涯を描く、珠玉の歴史小説!

引用元:「カドカワストア」より

興味深い質問

「定子のどの時期が描かれているんですか?」

「定子の17歳から晩年までの人生が描かれています。若き日の宮廷生活の華やかさから、晩年にかけて経験する試練や苦難まで、定子の成長と変化を通して、生涯が描かれています」

■参加者が盛り上がったところ

「教養に裏打ちされた優雅な言葉の掛け合い」

「定子と清少納言の教養が織りなす、洗練された優雅な言葉の掛け合いは、まさに逸品です。当時の時代背景を考えると、これほど知的でセンスのある返答や会話ができるのは、やはりこの二人だからこそ。彼女らの対話は、単なるやりとりにとどまらず、その知識と感性が絶妙に絡み合う瞬間が随所に見られます」

■この本をより楽しめる情報

コミカライズ作品やSF小説で知られる著者冲方丁氏が、時代小説『天地明察』『光圀伝』に続いて、待望の歴史小説第3弾!
本作では、千年の時を超えて平安王朝の世界を鮮やかに描き出し、古の貴族たちの華やかさや複雑な人間模様が織りなす物語が展開されます。




【課題本一覧】
幻滅 / バルザック    ←11月頃??
箱男 / 安部公房     ←未定(参加希望者が2名以上になれば)
金閣寺 / 三島由紀夫        〃
海と毒薬 / 遠藤周作        〃

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