BLOG

アーカイブ

小説限定(ジャンルは自由)読書会 2024年8月3日(土)

今回の読書会では、クラシカルな英国怪奇小説から奇妙なダークファンタジー、そしてアメリカ南部の歴史や社会を鋭く描いた作品まで、幅広いジャンルの小説が紹介されました。
ということで、読書会の様子をお伝えします。

内容にはネタバレも含んでいますので、ご注意下さい。


ゴースト・ハント / H・R・ウェイクフィールド (創元推理文庫)

■クラシカルな英国怪奇小説に興味があるあなたにオススメの一冊

幽霊屋敷訪問の様子を実況するラジオ番組のリポーターが訪れたのは、30人にも及ぶ自殺者を出したという異様な来歴を秘めた邸宅だった……。ーー

引用元:「東京創元社」より

■興味深い質問

「Youtuberというのは?」

ラジオ番組では、リポーターが幽霊屋敷を訪問し、その様子をリスナーに実況するという内容が放送されていました。リポーターが訪れたのは、なんと30人もの自殺者を出したという異様な赤い館。

「Youtuberみたいですよね」
「というのは?」
「いや、だって、この幽霊屋敷訪問を生放送で実況するって、今で言えば過激なYoutuberがやりそうなことですよね。今なら『心霊スポットに行ってみた!』とかってタイトルで動画を上げそうじゃないですか? この作品は1900年代の半ばですけど、まるで現代の実況系Youtuberのエッセンスを予見していたかのようで驚きますよね」
「確かに、どの時代にも無茶をして注目を集める人っているんだなって」

■参加者が盛り上がったところ

「そちらの本は……」

『世界の心霊写真』というタイトルの本でした。
「えー、そんな本なんですか!  懐かしいというか、そんなの今はほとんど見かけませんよね」
「そうですね、昔は合成や画像編集の技術が未発達だったから、不穏で不可解な心霊写真がそのまま信じられていました」
「今の時代にはあまり通用しないかもしれませんが……」
「でも、ある意味ロマンを感じますよね。心霊写真には、現実と非現実の狭間にいるような不思議な魅力がありますし、その“説明のできないもの”に心を奪われるのがロマンなんだと思います」

■この本をより楽しめる情報

正統派の英国怪奇小説の名手である著者。その彼が生み出した逸品の数々から、珠玉の18篇を厳選して収めた文庫版傑作選が登場です。怪奇文学の傑作がここに集結しています。


堆塵館 / エドワード・ケアリー (東京創元社)

奇妙なダークファンタジーに興味のあるあなたにオススメの一冊

ロンドンの外れの巨大なごみ捨て場。幾重にも重なる山の中心には『堆塵館』という巨大な屋敷があり、ごみから財を築いたアイアマンガー一族が住んでいた。一族の者は、生まれると必ず「誕生の品」を与えられ、一生涯肌身離さず持っていなければならない。十五歳のクロッドは誕生の品の声を聞くことができる変わった少年だった。ある夜彼は館の外から来た少女と出会った……。ーー

 引用:「東京創元社」より

興味深い質問

「生まれて手から生涯肌身離さず持っているものはありますか?」

「生まれてからずっとですか?」
「はい」
「それはさすがにないですねー」

■参加者が盛り上がったところ

「挿絵」

「著者自身が手がけた章ごとの挿絵が、いい味を出しています。その独特なタッチがクセになり、気づけば挿絵を見るだけで次の展開にワクワクしてしまうほどです」ということで、参加者の皆さんにも実際に挿絵を見てもらいました。

挿絵は一見すると陰鬱で、キャラクターたちはどこか困り顔。それでも、細かく描き込まれた表情や仕草には、不思議な愛嬌があり、物語の世界観に一気に引き込まれてしまいます。

■この本をより楽しめる情報

〈アイアマンガー三部作〉の第一作目。イラストレーターや彫塑家としても国際的に評価を受けている著者が手がけた、異色のダークファンタジーです。物語の魅力だけでなく、各章ごとに挿入される著者自身の手による挿絵も、見どころです。


八月の光 /フォークナー (光文社古典新訳文庫)

■アメリカ南部の歴史や文化に興味があるあなたにオススメの一冊

お腹の子の父親を追って旅する女、肌は白いが黒人の血を引いているという労働者、支離滅裂な言動から辞職を余儀なくされた牧師……。米国南部の町ジェファソンで、過去に呪われたように生きる人々の生は、一連の壮絶な事件へと収斂していく……。ーー

引用元:「光文社古典新訳文庫」より

興味深い質問

「読みやすかったですか?」

「作品自体、独特な語りの手法で、同じ状況や感情が繰り返しリフレインされ、言葉の量が圧倒的でした。さらにスピード感があって、一気に物語の深みに引き込まれます。が、注釈も充実していて、なんとか読めましたよ」

■参加者が盛り上がったところ

「無秩序で過激」

迫害、差別、出生の秘密、暴力、セックス、殺人といったテーマが次々と押し寄せて、当時の南部の惨状を圧倒的なリアリティで突きつけられます。
「その過激さと無秩序さに言葉を失いますね。当時のアメリカ南部の現状を改めて思い知らされました」

■この本をより楽しめる情報

著者の代表作のひとつです。禁酒法時代のミシシッピ州を舞台に、架空の「ヨクナパトーファ郡ジェファソン」で繰り広げられる物語。崩れゆく社会の中で運命に抗う人々、詩的なタイトルが暗示する暗さや苦悩が描かれています。



【課題本一覧】
星を編む / 凪良 ゆう ←10月19日(土)開催予定    
幻滅 / バルザック   ←11月23日(土)開催予定
重力の虹 / トマス・ピンチョン ←12月21日(土)開催予定
金閣寺 / 三島由紀夫   ←未定(参加希望者が2名以上になれば)
海と毒薬 / 遠藤周作        〃

関連記事一覧